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第20回一橋総研・三田経済研ジョイントセミナー実施レポート
開催日時:2023年3月29日(水)オンライン開催
『リアルと本気で考える日本の安全保障』
講師:尾上 定正 氏 (元空将・地経学研究所シニアフェロー)
開催日時:2023年3月29日(水)オンライン開催
『リアルと本気で考える日本の安全保障』
講師:尾上 定正 氏 (元空将・地経学研究所シニアフェロー)
【講師プロフィール】
1982年防衛大学校卒業。1997年米国ハーバード大学ケネディ大学院修士課程修了。第2航空団司令兼千歳基地司令、統合幕僚監部防衛計画部長(2013年空将昇任)、航空自衛隊幹部学校長、北部航空方面隊司令官を経て、2017年航空自衛隊補給本部長を最後に退官。2019年7月~2021年6月、ハーバード大学アジアセンター上席研究員。
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何故、日本は1930年代、無謀な大破局戦争に突入して行ってしまったのか?大東亜戦争あるいは太平洋戦争のことである。戦後の歴史教科書で「軍部」という言葉がよく出ていたのを覚えている。要は戦前の政治家は2・26事件や5・15事件で軍部に脅かされ、リアルな情勢分析に基づくまともな政治判断が出来ないまま国家を破滅的大戦争に引き込んでしまった。その意味で当時の文民政治家と軍部のコミュニケーションは劣悪であったとしか言いようがない。では今の日本は大丈夫なのか?軍部とは言えないが防衛省制服組と関係閣僚や国会議員たちの間では自由闊達で政策創造的な議論が展開されているだろうか?そんな想いで防衛省制服組の元トップであった尾上氏に登壇して頂いた。彼は日本の安全保障問題につき「台湾有事」、「憲法九条」、「核保有」そして「拉致問題」の「4つのリアル」から問題提起する。
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「台湾有事」のリアルー数千名の自衛官の命が犠牲に
中国が台湾進攻の軍事的アクションにいつ出るか?現時点の可能性としては習主席の任期が第3期(5年)から第4期目に入る2027年。ここで習体制の台湾政策に対する鼎の軽重が問われる。来年の台湾総統選で国民党が勝利すれば中国共産党との非軍事的融合としての国共合作が2027年に向けて動き出すかもしれない。一方、民進党が依然、政権を維持するなら習体制の焦りは加速し台湾進攻のボルテージは高まる。
米CSIS(戦略問題研究所)が今年1月におこなった24回の軍事シミュレーションでは中国の台湾占領は失敗する。但し4つの条件がある。1)台湾の徹底抗戦 2)米軍の迅速な軍事介入 3)在日米軍基地の使用 4)台湾海峡を渡って来る中国の着上陸侵攻部隊を叩くための十分な空対地・空対艦ミサイルの装備。但し日米の犠牲も甚大。米軍は2隻の空母を消失。自衛隊は百数十機の戦闘機を失い、数千名の自衛官の命が犠牲になる。
もし台湾防衛の膨大な軍事的コストを米国そして日本が躊躇すれば、2027年の有事は回避され台湾が香港型に近い形で中国に併合される可能性が強まる。その場合、米国は東アジア覇権を諦め、かつて中国サイドから提案されていたという「太平洋米中東西分割管理案」の受け入れが現実化するかもしれない。当然、日米同盟は根本的に見直され、日本外交は「バンドワゴンに乗って(※多勢に与して、勝馬に乗って)」対中従属を選択するかもしれない。
憲法九条のリアルー戦争になったら戦う日本人は世界最低の13.2%
世界数十カ国の大学・研究機関の研究グループが参加し、共通の調査票で各国国民の意識を調べ相互に比較する『世界価値観調査』(2021版)で「もし戦争が起こったら国のために戦うか」という問いに「はい」と答えた日本人は13.2%で世界79カ国中、最低だった。米国は59.6%、韓国は67.4%、中国は88.6%。最近の内閣府世論調査では、「仮に侵略された場合どうするか」の問いに「自衛隊に志願する」と答えた者は4.7%しかいない。国民に国を守る意思があるのか?これらのデータを。見る限り正直不安になる。
問題の憲法九条だが、第1項「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」は残しておいてもいいのでは。第2項「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。 国の交戦権は、これを認めない。」は廃止すべきだ。自衛隊の存在・目的については第3項を設け明記する必要はない。かえってややこしくなる。
要は日本の政治体制自体が軍の存在を前提にしない仕組みのままなので、軍を国家に必要かつ正当なファンクションとして位置付けるべくステップバイステップ整えていくしかない。
核武装のリアルーそれでも非核の封印を解くな
ウクライナ侵略におけるプーチンの戦争論は、戦術核兵器を通常兵器の補完的存在として位置付けたことにより、核兵器使用のタブー信仰を崩壊させた。しかし、猫も杓子も核兵器とは絶対にならない。特に日本人は非核の封印を決して解いてはならない。日本独自の核武装はどう考えても核抑止力とはならず、逆に周辺国(北朝鮮・ロシア・中国)による核攻撃を誘発するだけ。もう1つ、米国との核シェアリング(ニュークリアシェアリング)という考え方があるが、具体的には米軍の戦術核たるB61核爆弾を三沢基地辺りに常時保管して、いざという時に航空自衛隊のF35戦闘機に乗せて敵地攻撃するわけだが、これも日本に対する核先制攻撃の可能性を高めるだけである。
日本が核兵器に触らずにやるべき対抗策は次の4つ。1)非核通常戦力の強化 2)日本国外にある米国の核抑止力への信頼と強化 3)いざという時に備える核シェルターの国内整備 4)唯一の被爆国として世界的な核軍縮運動を推進
北朝鮮拉致問題のリアル-自衛隊は救出作戦に出るのか?
ZOOM参加者から1年半ぐらい前のユーチューブ動画で見たという拉致被害者の会と習志野空挺団(習志野に基地を置く陸上自衛隊第1空挺団。落下傘降下とヘリコプターによる空挺作戦を展開する部隊)関係者のやり取りが紹介され、同空挺団より拉致被害者救出作戦の訓練をしている旨の発言があったことを話題に出した。そのやり取りの中では作戦実行における自衛隊員の犠牲が甚大であることから拉致被害者の会から躊躇の声が出たのに対して習志野空挺団幹部より、同作戦の第1の目的は被害者救出よりも国家の尊厳と主権を守ることが強調されたという。
本件に関して尾上氏は詳細不明であり、現状ではその種の作戦訓練は未実施と思うが、政府が一たび決定すれば自衛隊は躊躇なく訓練を開始するはずと明言した。
(文責:一橋総研 市川周)
第19回一橋総研・三田経済研ジョイントセミナーの実施レポート
開催日時:2022年12月6日(火) 形 式:ZOOMによるオンラインセミナー
『これから日本は中国とどう付き合っていけばいいのか?』
講師:川島 真氏 東京大学 大学院総合文化研究科教授 |
第18回一橋総研・三田経済研ジョイントセミナーの実施レポート
開催日時:2022年5月31日(火) 形 式:ZOOMによるオンラインセミナー
開催日時:2022年5月31日(火) 形 式:ZOOMによるオンラインセミナー
『ロシア・ウクライナ侵攻の世界史的意味を問う』
講師:細谷雄一氏 慶応義塾大学法学部教授 ケンブリッジ大学ダウニング・カレッジ訪問研究員 |
第17回一橋総研・三田経済研ジョイントセミナーのご報告
開催日時:2021年9月22日(水) 形 式:ZOOMによるオンラインセミナー
開催日時:2021年9月22日(水) 形 式:ZOOMによるオンラインセミナー
『「オリンピック後」そして「コロナ後」の日本の政治を問う』
講師:中島 岳志氏 東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院教授 |