イベント情報
実施レポート
第10回 一橋総研・三田経済研ジョイントセミナー[2019年6月24日]
『令和ニッポンの新たな国づくりを問う―「東京国」と「地方国」の分断に歯止めをかけろ!』
BY 佐々木信夫 氏 ㈳日本国づくり研究所理事長 中央大学名誉教授
第10回 一橋総研・三田経済研ジョイントセミナー[2019年6月24日]
『令和ニッポンの新たな国づくりを問う―「東京国」と「地方国」の分断に歯止めをかけろ!』
BY 佐々木信夫 氏 ㈳日本国づくり研究所理事長 中央大学名誉教授
人口規模で見た「県」という存在の嘘くささ?
あの石原慎太郎東京都知事が意気盛んであった頃、当時の片山鳥取県知事とちょっとしたやり合いになった。石原知事が東京都で宿泊費1万円以上は100円、2万円以上は200円というホテル税を導入。これに片山知事が反発、「なんで地方から仕事に来ている我々がそんな税金を東京都に払わねばならないのか。私は9800円の都市センターホテルに泊まる」とやった。それに対して石原知事は「うちの八王子市より人口の少ない県の知事さんが何をか言わん」とばかり取り合わなかったという。ちなみに八王子市が58万人に対して鳥取県は56万人である。 47都道府県体制を人口規模で見るとある種の「虚構性」が見えてくる。四国4県合計の人口は375万人だが来年あたり横浜市に抜かれてしまう。市の人口が県を抜いてしまった市は全国に24もある。大きいところでは横浜市(374万人)が都道府県人口第10位の静岡県(366万人)を追い抜き、大阪市(274万人)が同13位の京都府(259万人)を抜いた。都道府県人口最下位の鳥取県は八王子市のみならず、船橋市や川口市にも追い抜かれている。 |
人口爆発対応型“廃藩置県”から人口超縮小対応型“廃県置州”へ
廃藩置県は明治維新(1867年)直後から動き出し、20年余かけて1889年に今の47都道府県体制という“国のかたち”になった。その前後から日本は爆発的な人口増大期に突入する。明治維新当時の3,300万人台が130年余年後の2004年には約4倍の1億3000万人台に迫った。日本民族のこの約4倍の人口爆発を支え、促進したのが47都道府県体制という“国のかたち”であった。
日本民族はこれから100年、真逆の人口減少を経験することになる。現在の1億2000万人台が100年後には半分の6000万人台を切る。人口大爆発を支えた47都道府県体制という入れ物を、その半分サイズの“国のかたち”にどうたたむか?この明快な解決策こそ、47都道府県を10程度の「州」に区分け再編する“廃県置州”の発想である。
“県潰し”こそ国家財政再建の王道(?)
日本の国家財政破綻構造を大雑把につかめば、中央政府支出が65兆円、地方政府支出が100兆円(47都道府県50兆円、1718市町村50兆円)で合計165兆円。これに対して徴税力は中央政府が60兆円、地方政府が40兆円の計100兆円しかなく65兆円の赤字経営。その累積借金は30年前の300兆円から1300兆円に拡大し、国民1人あたり1,000万円の負債となる。ではこの膨大な中央・地方支出165兆円をどう削減するか?「メスの入れようがない」という開き直りがまかりとおっている。これから絶望的に増大する社会保障支出(現在、医療費、年金、その他福祉がそれぞれ10兆円で計30兆円)の削減には誰も触れない。では増税か?消費税、相続税等々どこまで可能か?
ここに巨大な無駄支出が存在する。実は165兆円支出のなんと45%(70兆円余)が中央・地方政府による340万人公務員(中央65万人、都道府県139万人、市町村136万人)の人件費を始めとした日本統治機構の「間接経費」である。民間企業なら倒産している。それがこの135年間放置されてきた。いわゆる行政の「三層性」である。国の場合、省庁ごとに霞ヶ関本庁、全国9つのブロック機関、そして各県単位の出先機関が存在するが、県の場合も県庁、県内地方事務所、市町村出先機関の「三層性」がほぼ相似形で存在し、なんと市町村でも程度の差こそあれ「三層性」がへばりついている。この傾向は平成大合併で3,232市町村が1718市町村に広域化したことでむしろ強化された。
中央・地方を入れた国家財政65兆円の赤字額を社会保障支出で押さえ込まずに、また大増税路線に踏み出さずに目に見える形で実現する方法がある。この国家統治「三層性」に思い切ってメスを入れることだ。すなわち全国9つのブロック機関をベースに県を廃して10前後の州政府を形成する。このことにより国家レベルの「三層性」が消える。県の「三層性」は廃県により完全消失する。これにより現在の日本統治機構の「間接経費」70兆円のほぼ半分が大節約出来るのではないか。謂わば国民に対して年金大幅減額、医療費大幅抑制という恐怖シナリオを実行しない交換条件として“おらが県”の廃止を受け止めてもらうのだ。
フリーウエー国家構想の提唱―高速道路も新幹線もタダにしろ
アメリカは高速道路をフリーウエーと呼ぶ。一部に有料もあるが多くがタダである。この方式を日本も取り入れたらどうだ。高速道路、新幹線とも立派な移動インフラとして整備されてきたが、使用コストの面から十分に機能を発揮していない。宝の持ち腐れだ。これらのインフラをタダか大幅に値下げさせ国民の地方分散やダイナミックな国内移動を加速させるべきだ。そのための財源としては道路建設の目的税であったガソリン税(年間5兆円)の半分を使い、一部地方交付税からも充当する。日本に新たに登場する各州間の横の行き来を高速道路や新幹線のフリーウェーインフラが加速させることになる。
(文責:一橋総研 市川周)
廃藩置県は明治維新(1867年)直後から動き出し、20年余かけて1889年に今の47都道府県体制という“国のかたち”になった。その前後から日本は爆発的な人口増大期に突入する。明治維新当時の3,300万人台が130年余年後の2004年には約4倍の1億3000万人台に迫った。日本民族のこの約4倍の人口爆発を支え、促進したのが47都道府県体制という“国のかたち”であった。
日本民族はこれから100年、真逆の人口減少を経験することになる。現在の1億2000万人台が100年後には半分の6000万人台を切る。人口大爆発を支えた47都道府県体制という入れ物を、その半分サイズの“国のかたち”にどうたたむか?この明快な解決策こそ、47都道府県を10程度の「州」に区分け再編する“廃県置州”の発想である。
“県潰し”こそ国家財政再建の王道(?)
日本の国家財政破綻構造を大雑把につかめば、中央政府支出が65兆円、地方政府支出が100兆円(47都道府県50兆円、1718市町村50兆円)で合計165兆円。これに対して徴税力は中央政府が60兆円、地方政府が40兆円の計100兆円しかなく65兆円の赤字経営。その累積借金は30年前の300兆円から1300兆円に拡大し、国民1人あたり1,000万円の負債となる。ではこの膨大な中央・地方支出165兆円をどう削減するか?「メスの入れようがない」という開き直りがまかりとおっている。これから絶望的に増大する社会保障支出(現在、医療費、年金、その他福祉がそれぞれ10兆円で計30兆円)の削減には誰も触れない。では増税か?消費税、相続税等々どこまで可能か?
ここに巨大な無駄支出が存在する。実は165兆円支出のなんと45%(70兆円余)が中央・地方政府による340万人公務員(中央65万人、都道府県139万人、市町村136万人)の人件費を始めとした日本統治機構の「間接経費」である。民間企業なら倒産している。それがこの135年間放置されてきた。いわゆる行政の「三層性」である。国の場合、省庁ごとに霞ヶ関本庁、全国9つのブロック機関、そして各県単位の出先機関が存在するが、県の場合も県庁、県内地方事務所、市町村出先機関の「三層性」がほぼ相似形で存在し、なんと市町村でも程度の差こそあれ「三層性」がへばりついている。この傾向は平成大合併で3,232市町村が1718市町村に広域化したことでむしろ強化された。
中央・地方を入れた国家財政65兆円の赤字額を社会保障支出で押さえ込まずに、また大増税路線に踏み出さずに目に見える形で実現する方法がある。この国家統治「三層性」に思い切ってメスを入れることだ。すなわち全国9つのブロック機関をベースに県を廃して10前後の州政府を形成する。このことにより国家レベルの「三層性」が消える。県の「三層性」は廃県により完全消失する。これにより現在の日本統治機構の「間接経費」70兆円のほぼ半分が大節約出来るのではないか。謂わば国民に対して年金大幅減額、医療費大幅抑制という恐怖シナリオを実行しない交換条件として“おらが県”の廃止を受け止めてもらうのだ。
フリーウエー国家構想の提唱―高速道路も新幹線もタダにしろ
アメリカは高速道路をフリーウエーと呼ぶ。一部に有料もあるが多くがタダである。この方式を日本も取り入れたらどうだ。高速道路、新幹線とも立派な移動インフラとして整備されてきたが、使用コストの面から十分に機能を発揮していない。宝の持ち腐れだ。これらのインフラをタダか大幅に値下げさせ国民の地方分散やダイナミックな国内移動を加速させるべきだ。そのための財源としては道路建設の目的税であったガソリン税(年間5兆円)の半分を使い、一部地方交付税からも充当する。日本に新たに登場する各州間の横の行き来を高速道路や新幹線のフリーウェーインフラが加速させることになる。
(文責:一橋総研 市川周)
共 催 |
一橋総合研究所 三田経済研究所 |
日 時 |
2019年6月24日(月) 18:30~20:30 |
会 場 |
如水会館 14階 記念室東 東京都千代田区一ッ橋2-1-1 |
テーマ |
『令和ニッポンの新たな国づくりを問う―「東京国」と「地方国」の分断に歯止めをかけろ!』 この国はいつの間にか2つの国に分かれてしまった。一極集中の止まらない「東京国」と過疎・人口減の進む「地方国」である。国土のたった3.6%に過ぎない東京圏(一都三県)に国民の3割が集中し、さらに増え続けている。しかし、その「東京国」も五輪バブルが弾けた後は「老いる東京」問題に直面し、「地方国」の崩壊は頻発する自然災害で加速する。どうする令和ニッポン?かつて「平成維新」を唱えた大前研一氏の「廃県置州」断行を、それでも叫び続ける佐々木信夫氏はドンキホーテではない。「東京国」と「地方国」を知り尽くした人物の「令和維新」戦略を問う。 |
講 師 |
佐々木 信夫 氏 ㈳日本国づくり研究所理事長 中央大学名誉教授 1948年岩手県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修了、慶應義塾大学大学院にて法学博士取得。東京都庁に16年間勤務し、大学教授に転身。89年聖学院大学教授、94年~2018年中央大学教授・同大学院教授として教鞭を執る。政府の地方制度調査会委員(第31次)、日本学術会議会員(第22・23期)、大阪府・大阪市特別顧問など歴任。専門は行政学、地方自治論 |