イベント情報
実施レポート
第12回 一橋総研・三田経済研ジョイントセミナー [2019年12月10日開催]
「米中摩擦下の中国経済と日中連携の行方」
―中国内部の新たな変化と日本のチャンス・リスクを問う
By 帝京大学経済学部教授 郭 四志 氏
第12回 一橋総研・三田経済研ジョイントセミナー [2019年12月10日開催]
「米中摩擦下の中国経済と日中連携の行方」
―中国内部の新たな変化と日本のチャンス・リスクを問う
By 帝京大学経済学部教授 郭 四志 氏
昨今、中国をはじめとする新興国の台頭に伴い、世界政治経済構造が大きく変わりつつある。中国のGDPの世界経済シェアは30年前の僅か1%台から同16%に達し、アメリカのGDPの6割強になり、財貿易と外貨準備高が世界1位、工業生産能力も世界25%シェアをもってトップになっている。こうして中国の台頭が世界政治経済の構造の多極化を加速させている。アメリカ一極支配の単極構造から中国・新興国が参加する多極構造に変わりつつある中、米国をはじめとしてポピュリズムや保護貿易主義が高揚し、米中両大国の世界主導権を巡って米国の仕掛けた貿易戦争が勃発し、米中摩擦が長引いている。
2018年以来、米中摩擦が激化する中、債務削減やシャドーバンキングなどへの金融規制など、インフラ・固定資産投資の減速などにより、2018 年の中国の実質GDP 成長率は前年比6.8%(17年は同6.9%下方修正)から6.6%に減速している。これは天安門事件翌年の1990年以来、28年ぶりの低水準であり、さらに、2019年7月~9月の中国の実質GDP 成長率は前年同期比6.0%、1月~3月の6.4%、4 月~6月の6.2%から一段と低下した。中国経済や世界経済成長への懸念材料となっている。 このように中高速成長の「ニューノーマル」段階に入った中国経済は、労働力と固定資産、不動産投資による投資型、鉄鋼や石炭など重化学工業依存型といったこれまでの成長パターンの限界が顕在化しつつある。中国政府はこの限界を乗りこえるために経済構造の転換や産業の高度化を目指し鉄鋼や石炭業界をはじめとする過剰能力・過剰債務の削減に取り組みながら、IoT、AIなどインターネット技術を活用するための新興・戦略的産業を推進し、経済成長をけん引させようとしている。 こうした中、2018年下半期から、米中貿易摩擦がさらに過熱・激化してきた。中国の輸出や海外M&Aが影響を受けるのみならず、中国国家に掲げたイノベーション戦略「中国製造2025」も直撃されている(制裁ターゲットとなっている)。したがって中国経済を取り巻く国際環境が厳しくなり、その影響により、中国経済の直面しているリスクが増大し、先行きに不確実性が高まっている。長引く米中摩擦により、中国経済成長のさらなる減速が懸念されている。 米中摩擦の下で、近年進めてきた供給側改革に伴う重厚長大産業の余剰生産能力の削減、膨らんだ企業債務のデレバレッジと産業構造の変化、技術グレードアップは焦眉の急であり、加えて新しい情勢下での日中の連携・展開のあり方も問われることになる。 |