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2004年09月06日 一橋総研政策セミナー (於:如水会館)

テーマ:プロ野球改革

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テーマ:プロ野球改革
メインスピーカー:小林至氏(元プロ野球選手、江戸川大学助教授、HRI会員)
ゲストスピーカー:大西たまき氏(PBS全米公共テレビ放送局ファンドレイザー)

当日の様子

要旨

小林至氏

 本日(9月6日)、プロ野球選手会は、10日の午後5時までに、近鉄とオリックスの合併が一年間凍結されない場合の、9月11日以降の毎週土日のストライキ権の行使を決定した。個人的には、これまで変化のなかったプロ野球界において、スト権の行使は、必ずしも悪いことではないと思う。しかし、今回のストライキの話を聞いたときに、スト破りが起こるのではないかと思った。というのも、自分もそうだったが、ほとんどの選手にとって、選手会とは、有名選手の親睦団体くらいの意識で、自分もその一員であるという意識はないと思う。何か権利を勝ち取った歴史があるわけでもなく、実際、選手会にいることで何か恩典があるわけでもない。

 たとえば、競輪などでは、入ってきた選手全員、一定の試合出場の権利が与えられる。これは、彼らが勝ち取った権利だ。また、競輪選手会では、賞金獲得額の5%が年金の財源となる。上位選手は年間2億円、下は500万円程度だから、上位選手がかなりの犠牲を払っていることになる。こうした互助の仕組みがあるから、機能する。プロ野球選手会にはこうした互助の仕組みも、経営者と向きあって勝ち取った権利もほとんどない。そして現実問題として、選手会と球団、どちらにつくほうがいいか考えた場合、明らかに、球団だ。もしもいま、私が2軍選手であって、球団側に1軍登板を約束してもらえるならば、スト破りをするかもしれない。

 プロ野球界は他にも多くの問題を抱えているが、そのひとつに企業スポーツの終焉という時代の流れがある。これまで、日本のスポーツを支えてきたのは企業である。しかし、それが90年代に立ち行かなくなってきた。その証拠に、ここ数年で300くらいの実業団スポーツチームが潰れている。プロ野球界は、問題を先送りして、この時代の変化に対応することをしなかった。変化するチャンスを何度も逃してきた。これが今回の問題の根本にある。

 企業の支援を受けられなくなったのなら、地域に還るしか道はない。地域に根付くには、地域のファンに愛してもらわねばならない。地域のファンが増えれば、球場の観客が増える。観客が増えれば、メディアが注目し、その際たる姿がテレビ中継である。そうなると、今度は、メディア露出の価値を認めて企業がスポンサーにつく。こうやってスポーツビジネスは大きくなるのである。これまでの大スポンサー・テレビの機嫌ばかりを伺ってきた体質を改め、もう一度原点に帰って、地域、ファンを大事にする必要があるだろう。

 もうひとつは、プロ野球選手はもっと夢を語るべきである。大きな夢を語らなければならない。イチローがメジャーリーグに行った時に、私は首位打者と盗塁王を取るくらいの活躍はするだろうと、その旨を朝日新聞の電子版のコラムにも書いた。一方、ほとんどの解説者は三割打てば十分と言っていた。それほどメジャーリーグは雲の上の存在と考えられていた。なんで自国のプロ野球にそんなに自信がないのだろうか。元プロ野球選手である解説者は、もっと夢を語らなければならない。メジャーリーグのチャンピオンをワールドチャンピオンと言うのは、アメリカ人が言うのは勝手だが、日本人、特に日本のプロ野球出身者がいうのは、やめるべきだ。なぜなら、そういうことは自分たちで自分たちを二流だといっていることに他ならない。そんな世界に誰が夢を感じ、大金を払ってくれるものか。

 今回のセミナーでは、アメリカのNPOでファンドレイズ(資金集め)の仕事をしている、大西たまきさんにもお話をうかがった。プロ野球問題との直接的な関連性は少ないかもしれないが、今回のプロ野球問題の主因の一つが「お金」の問題だと考えるならば、公共性の強い団体の資金調達はいかにあるべきか、という点で参考になると思われる。

大西たまき氏

 小林氏の人々に愛されなければならないという考えには共感した。日本のスポーツチームは、資金を提供してくれる企業のことばかりを考えて、市民、ファンをないがしろにしているところがある。お金は企業から入るが、聴衆はあくまで市民であるということを忘れてはならない。その根底にはパブリック(public)の概念についての考え方がある。アメリカでパブリックと言ったら市民のことを指す。日本ではパブリックが何を指すのかが曖昧で、自分には分からない。日本でもパブリックの概念をしっかりと確立する必要があるだろう。

 私は資金調達(ファンドレイズ)について理解してもらえるよう活動している。ファンドレイズというのは社会問題を解決するために資金を集め、その資金を社会に還元できるように管理する仕事である。日本ではまだまだ浸透していない仕事であるが、これによって、今回のプロ野球問題始め、様々な社会問題を解決することができるのではないだろうか。

質疑応答

Q.グッズの売り上げ、テレビの放映権料などで、巨人の一人勝ちの状況になっている。この利益が、リーグ又は球界全体に入るようなシステムにするべきであると思うが、アメリカなどではどうなっているのだろうか?

A.(小林氏)完全に分配する仕組みをつくっているのがアメリカンフットボールで、テレビ放送権料、スポンサー料、グッズなどのライセンス料は全て中央に入るシステムになっている。それを全球団で分配する。入場料も、ホームとビジターで6:4だ。これができたのは、アメリカンフットボールが後発のスポーツであり、他のスポーツに対抗するためにそうせざるをえなかったからである。日本のプロ野球で分配システムを機能させれば、巨人の収入は50億円近く減ることになるだろう。これを巨人が受け入れるのは難しいのではないか。

Q.小林氏の球団を地域に還せという考えには大賛成である。しかしこれには長い時間がかかるのではないか?これを実現するための特効薬はあるのか?

A.(小林氏)球団の移転というのが面白いのではないか。メジャーリーグでは「支援してくれなければ外に行きますよ」という考えがある。これにより、自治体と球団の間によい緊張感が生まれる。広島市民球場などの古くなった球場を建て替えてもらえないのならば、カープは移転しようという動きを見せるのもひとつの手ではないだろうか。

(要旨作成・水盛伸二郎)

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