実施レポート
第23回 一橋総研・三田経済研ジョイントセミナー [2024年5月28日 開催]
米大統領選の行方と今後の日米関係 -「敗戦レジューム」の向こうに見えて来るもの
講師:渡辺 靖 氏 慶應義塾大学教授
米大統領選の行方と今後の日米関係 -「敗戦レジューム」の向こうに見えて来るもの
講師:渡辺 靖 氏 慶應義塾大学教授
渡辺 靖 氏
慶應義塾大学教授 慶應義塾大学環境情報学部教授。1967年生まれ。専攻は、文化人類学、文化政策論、アメリカ研究。1997年ハーバード大学で博士号(社会人類学)取得。オックスフォード大学シニア・アソシエート、ケンブリッジ大学フェロー、パリ政治学院客員教授を経て2005年より現職。文化人類学を土台とした重層的視点からのアメリカ観察は出色。著書に『アフター・アメリカ』『文化と外交』『沈まぬアメリカ』『白人ナショナリズム』等。 |
ペリー黒船来航、マッカーサー進駐と近代日本はほぼ80年ごとに対米関係を契機に大きく国のかたちを変えて来た。そして今「ほぼトラ」現象。今度の大統領選は日本の未来にどう影響するのだろうか。急速に進む日本国内の自民党幻滅、自民党疲れ、自民党離れと米国内に浸透し続けるトランプの自国第一主義。この2つが11月の米大統領選で交差することで80年に及ぶ我が国の「敗戦後レジューム」に大きな構造変動が予感される。それは幕末改革のペリー、敗戦改革のマッカーサーに続く新たな改革を誘引する第3の男の登場かもしれない。
長い「昭和」が遠うのき、「平成」も終わり、「令和」にもなじんで来たのに、「戦後」だけは多くの日本人の意識から容易に消えない。何故か?平和憲法と共に敗戦後日本の背骨となって来た日米安保(日米安全保障条約)が終わってないからだ。日米安保は日米いずれかが破棄通告すれば1年後には条約解消となる。日本の場合、この決定に憲法改正のような国民投票は要らず、衆議院の過半数採決だけでいい。しかし、この議論は与野党問わず、どこからも出てこない。一方、今秋大統領選挙を迎える米国内には「日米安保重荷論」がうごめき始めているという。 「トランプ再登場」断言は依然、時期尚早かもしれないが、今回の大統領選挙は80年に及ぶ「敗戦後レジューム」の歴史的転機を予感させる。米国民に一段と浸透しているトランプの自国第一主義と対日占領政策を甘受し依存し続けた自民党政治の衰弱が招来する両国関係の緊張と新たな可能性を、文化人類学を土台とした重層的視点からのアメリカ観察に定評のある渡辺靖氏とじっくり議論した。 (文責:一橋総研 市川周) |