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鈴木壮治の【言いたい放題】

第44回 「2020年東京オリンピック開催危機」打破のための日本の安全保障戦略

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写真は、文意と関連なく、季節の風景を入れています。ロード毎に変わりますのでこちらもお楽しみ下さい。

自由、平和そして人権と普遍的な価値に彩られた「憲法という服」を、戦後の日本は着た。そして、「平和を力で守る」というリアリズムを否定してきた。

国家としての「身体」の成長、日々厳しくなる安全保障環境の中、自らを守るために、日本が動こうとすると、その窮屈な「服」は張り裂けそうになる。

そのような日本が、2020年に、東京でオリンピックを開催することになった。それを契機に、「服」を、自らの意志で縦横無尽に動ける簡素にして強靭なものに仕立て直し、国家危機を御していくべきである。そのようなダイナミックかつ柔軟な安全保障体制の構築、そして、その実行無くしては、2020年東京オリンピックの開催は危ういものになる。

1940年開催予定のオリンピックは、日中戦争により、取り止めになった。

米ソ冷戦は、ソ連の崩壊により終結し、米国が単極となったが、それは「瞬時」で終わった。現在は、米国の他国(特に中国)に対するパワーが劣化しつつあり、多極化の様相を示し始めている。

歴史を紐解くと、多極化の中、覇権を目指す国の出現が、戦争につながったことが分かる。歴史は、覇権を目指したナポレオン、帝政ドイツそしてナチスドイツが、他国の「大連合」の前に沈んだことを刻んでいる。

全体主義国家・中国が、内政への国民の不満を逸らすために、軍事的暴挙に出る可能性を想定内に置くべきであり、格好の的が尖閣諸島である。既に、中国はジャブを放ってきている。

尖閣諸島周辺の日本の領海を、中国の海洋法執行機関「海警」が幾度となく侵犯し、1月には、中国のフリゲート艦が、日本の護衛艦に火器管制レーダーを照射した。さらに、9月には、中国の無人航空機が初めて尖閣諸島周辺を飛行した。

オバマ大統領のシリア空爆中止、今回のオバマ大統領のAPEC, 東アジアサミットへの出席取り止め、軍事費の2012年度から10年間で4870億ドル削減、さらに、今年から10年間で5000億ドルの強制削減と、米国の後退、継続的な軍事費削減が鮮明になってきた。

グローバルな経済そして環境問題における諸国間の相互依存が高まる中、自国のみの「平和」に逃げ込む「国家の個体主義」は、今や、通用しない。

米国の衰退に備え、自由民主主義の国々が、全体主義国家の侵攻を防ぐために、大同団結すべきである。日本も、その協力的集団安全保障の輪に入れるように、集団的自衛権を自らの意志で、駆使できるようにすべきである。

2020年東京オリンピックを成功させるためには、福島第一原発事故による放射能汚染問題解決と廃炉を確かなものにしなくてはいけない。住んでいた所から追われた被災者の方々は、長期間の仮住まいに疲れ切っている。元の住まいのあったところに戻り、2020年の東京オリンピックを、テレビ観戦で迎えることが出来るようになっていれば、オリンピックアスリートもオリンピック観戦目当ての海外からの観光客も、安心して東京を訪れることができる。

その実現のために、官民が連携し、福島の除染、汚染水問題処理、中間貯蔵施設の建設・管理そして廃炉を速やかに進める必要がある。

それに答えるように、10月の初旬、自民党東日本大震災復興加速化本部(大島理森本部長)は、国が全面に出て、汚染水処理対策、廃炉、除染そして避難住民支援に取り組むため、包括的な「福島復興加速化特措法」の制定を提唱した。これは、縦割り行政の弊害を打破し、環境危機に際して、国としての最大瞬発力を発揮しようとする国家環境安全保障戦略である。

国家が全面に出ることにより、除染、廃炉などの事業が公益事業となり、民間の資金、技術そして経営能力を結集するPFI化(提案型公益事業)への道も開かれたことになる。

英国の廃炉事業は、ある意味、巧みな官民連携である。政府機関である「原子力廃止措置機構」は、国際競争入札により、運転・保守を担うサイトライセンス会社(「原子力廃止措置機構」と運転保守契約を直接締結する)を管理する会社を選ぶ。落札した会社は、「原子力廃止措置機構」と経営管理委託契約を締結する。

そして、サイト管理会社には、実績に応じた成功報酬が支払われることになる。また、その実績に「原子力廃止措置機構」が満足しない場合、契約を解消することもできる。すなわち、英国政府は、民間企業の経営能力・経験を廃炉事業に巧みに活用しているのである。日本政府も、英国の知恵を参考にすべきである。

2020年東京オリンピックに際して、首都圏の電力供給を万全なものにしなくてはいけない。2020年と言えば、平成25年4月2日に、閣議決定した「電力システムに関する改革方針」の実施期限である。

まず、2015年を目途に送配電の広域系統運用機関を設立する。そして、次に、2016年を目途に、電気の小売業への参入の全面自由化を実現する。最後に、奇しくも、東京オリンピックが開催される2020年を目途に、発送電分離を行うことを予定している。

現在、福島第一原発問題で塗炭の苦しみを味わっている東電にとっては、その企業存続をさらに脆弱にする電力システム改革である。

しかし、首都圏の電力の安定供給を担ってきたのは東電であり、長年に培ってきた発電・送配電ノウハウと経験は捨てがたい。

東京都は、東電と連携して、首都圏において、太陽光発電、バイオマス発電そして風力発電などの再生可能エネルギー発電所をネットワーク化し、電力の需給バランスをダイナミックに行えるスマートタウンを実現すべきである。

東電は、東京オリンピックに、グローバルマーケットでも競争できる新たなエネルギー企業として生まれ変わる機会を、見出すべきである。それを後押しするためにも、私企業ではリスクを賄いきれない原子力発電事業は、政府機関が担うべきである。そして、それは、日本のエネルギー安全保障を支える原子力平和利用の技術体系を守り、育てることになる。

<雑誌「財界」2013年11月5日号に掲載>

( 2013年10月31日 / 鈴木壮治 )

※記事の無断転用・掲載は、厳禁する
鈴木壮治 / SOJI SUZUKI
一橋総研 統括責任者
株式会社日本リスク管理研究所・代表取締役
NPO法人・新日華産業技術フォーラム・理事
財団法人・日本科学振興財団・理事
一般社団法人・日中文化経済交流発展基金会・理事
日本ラオス文化経済交流協会・理事

静岡県浜松市出身。米国ペンシルヴァニア大学・大学院ウォートンスクール経営学修士(MBA)取得後、1975年 三井物産入社(化学プラント部)同社で2年間の米国研修を経て、1987年シティバンク入社。デリバティブ・ヘッジファンド担当のアシスタント・バイス・プレジデント。1989年からはチェースマンハッタン銀行のバイス・プレジデントに就任。その後、1996年に株式会社日本リスク管理研究所設立・代表取締役就任。現在に至る。共著に『宣戦布告「NO」と言える日本経済』(光文社)、『国家意志のある「円」』(光文社)、『アメリカ信仰を捨てよ』(光文社)、『「日本浮上」プロジェクト』(ブックハウスジャパン)などがある。
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■第3回 構造改革特区の問題点
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■第8回 李登輝氏と会い、憲法を考える
■第9回 北朝鮮と日本の防衛
■第10回 グローバル時代の安全保障
■第11回 日本の未来戦略
■第12回 国際金融という闘いの場
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■第18回 郵政民営化と国家安全保障
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