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鈴木壮治の【言いたい放題】

第42回 ユーラシアのエネルギー地政的「周辺国家」からの脱却

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写真は、文意と関連なく、季節の風景を入れています。ロード毎に変わりますのでこちらもお楽しみ下さい。

米国は、Asia Pivotという言葉を使い、自らの前足をアジアに置き、そこに重心をかけ、いざという時、国家としての瞬発力を発揮するとしている。

武道をやられている方にはお分かりいただけると思うが、前足に重心をかけておくと、攻撃の際、前足を緩めることにより、体軸の前進移動が容易になる。

米国がPivot(軸足)という言葉に託している戦略的意味は、いつでも、前後の足をスイッチし、前足に体重移動をするということである。例えば、今は、前足は東アジアであるが、いつでも足を踏みかえて、前足を中東に置くぞという宣言でもある。

今年の春、米韓合同軍事演習が行われた。

米軍は、B52戦略爆撃機、 B2ステルス戦略爆撃機 F22ステルス戦闘機そして原子力潜水艦を使った。

それは、いずれも核兵器を搭載できる代物である。北朝鮮そしてその背後にある中国への牽制であると同時に、韓国さらには日本にための核の傘(米国による核の拡大抑止力)が有効であることをデモンストレイトしたのである。

なおかつ、軍事演習後も米国は中国と北朝鮮を刺激するように、巡航ミサイルトマホークを搭載する原子力潜水艦・シャイアンを朝鮮半島近海に残した。

現在、日中で尖閣諸島に関しての緊張が高まっている。これは単なる日中の領土を巡ってのさや当てではなく、米中が、今後どのようにアジア太平洋を仕切るかの勝負の中にある。

中国は、圧倒的な米国の核攻撃能力に対して、有効な第二撃能力を持たない限り、米国との交渉において不利な立場から、脱却できない。

さらに、「アラブの春」の仕掛けにより、カダフィー政権崩壊とともに、リビアにあった中国のエネルギー利権は失われたようである。さらに、シリアのアサド政権への制裁決議に、ロシアとともにNOとしている中国にとって、アサド政権崩壊も、欧米による「アラブの春」による、中東・北アフリカからの中国・ロシアの追い出しの一環となり、大きな打撃となる。

中東と東アジアを結ぶシーレーンが米国の支配下のままであり、中国が輸入原油の50%程を依存する中東原油におけるアクセスが弱まることがあれば、上記の米中のアジア太平洋の支配地域確定のための交渉は、中国にとって、さらに、不利になるであろう。

日本が、尖閣諸島を守り、中国によるシーレーン支配を防ぐためには、まず、憲法を改正し、自衛隊を正規軍として認め、集団的自衛権を行使できるようにすべきである。その上で、中国のアジア・西太平洋支配を容認しない韓国、インドネシィア、フィリピン、オーストラリアなど連携して、米国とともに、シーレーンを守らなくてはいけない。

さらに、中東地域の安定こそが、日本のエネルギー安全保障上、肝腎である。

日本の中東原油依存は80%を超えている。シェールガス・シェールオイルの増産体制が整いつつある米国にとって、原油価格が高く推移することが、必要条件となっている。中東原油が安くなれば、シェールオイルの価格競争力に陰りがでるから、それは当然のことである。中東の地政学リスクが高まると中東原油価格は高騰する。

よって、日本が注意深く見守らなくてはいけないことは、シリア内戦、イランの核開発によるイスラエルのイラン攻撃リスクなどが渦巻く中東の安定化に、米国が、本気で取り組むかどうかである。

今後、米国は、2020年までに、1兆2000億ドルもの軍事予算削減をしなくてはいけないのであり、他国間の軍事的紛争または内乱に、積極的な関与はせず、必要な時のみ関与するオフショア・バランシングの軍事戦略で行かざるを得ない。

それでも、米国は、イランの核兵器開発阻止、イスラエルの安全保障確保そして包括的な中東和平構想の実現のために、中東における軍事プレゼンスを維持せざるを得ないと考える。

日本がすべきは、サウジアラビア、UAE諸国などとの関係を単なる原油・天然ガスの需要と供給に押し込めるのではなく、日本の持つ原子力発電所建設と維持管理能力、省エネ技術などの技術能力と資金能力を、中東諸国の天然資源依存国家経済からの脱却に活用できるようにし、彼らとの関係を親密なものにもっていくべきである。

また、日本は、シリアの背後にあり、シリアに対する強い影響力を持つロシアとの関係を相互依存・親密なものに持っていき、ロシア経由、シリア・アサド政権と欧米勢力との軋轢解消のため、尽力すべきである。

日本は、エネルギー地政学的にはユーラシアの周辺国とも言える立場に追いやられている。それを打破するためには、天然エネルギー資源に富むロシアそして中東・中央アジア地域との安定した相互依存的かつ多層的な関係の構築である。

( 2013年06月19日 / 鈴木壮治 )

※記事の無断転用・掲載は、厳禁する
鈴木壮治 / SOJI SUZUKI
一橋総研 統括責任者
株式会社日本リスク管理研究所・代表取締役
NPO法人・新日華産業技術フォーラム・理事
財団法人・日本科学振興財団・理事
一般社団法人・日中文化経済交流発展基金会・理事
日本ラオス文化経済交流協会・理事

静岡県浜松市出身。米国ペンシルヴァニア大学・大学院ウォートンスクール経営学修士(MBA)取得後、1975年 三井物産入社(化学プラント部)同社で2年間の米国研修を経て、1987年シティバンク入社。デリバティブ・ヘッジファンド担当のアシスタント・バイス・プレジデント。1989年からはチェースマンハッタン銀行のバイス・プレジデントに就任。その後、1996年に株式会社日本リスク管理研究所設立・代表取締役就任。現在に至る。共著に『宣戦布告「NO」と言える日本経済』(光文社)、『国家意志のある「円」』(光文社)、『アメリカ信仰を捨てよ』(光文社)、『「日本浮上」プロジェクト』(ブックハウスジャパン)などがある。
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