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鈴木壮治の【言いたい放題】

第27回 グローバル時代の集団的自衛権構想

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写真は、文意と関連なく、季節の風景を入れています。ロード毎に変わりますのでこちらもお楽しみ下さい。

先の「日米関係再構築と環境安全保障戦略」で、地球益を踏まえ、環境、軍事、金融そしてエネルギー分野等を含む日米間の複合レジームを統合化し、新たな日米安保を締結すべきと、提案した。

しかし、自らを自らの力で守るという誇りを捨てた国には、集団的自衛権は持つが、実行できないという「命乞い」が、跋扈する。

日本は、その負け犬根性を叩き直さない限り、米国に、堂々と論陣を張り、世界を主導する新たな日米関係を、構築することはできない。

国家の芯と集団的自衛権

多極化の進む中、国々は、必死に国益を追求し、世界の権力構造は、絶えず揺れ動いている。その現実に向き合う国際政治に、甘えと幻想は許されない。

圧倒的な軍事力と経済規模に加え、グローバル戦略を有する米国でさえ、世界を勝手に動かすことはできない。似非平和国家・日本が、核兵器廃絶、グローバルテロ撲滅そして地球温暖化阻止と、格好の良いことを叫んでみても、誰も真剣に耳を傾けないであろう。

まず、日本が成すべきことは、世界の動きに翻弄されない強靭な国家としての芯をつくることである。日本は、諸々のリスクに囲まれているが、逃げずに、そのリスクを御して、自らにより、自らを守る国家意思と戦略こそが、日本の芯となる。

そのために、日本は、多極化と多様化が進む世界の相互依存を支える、グローバルな視野を持った「集団的自衛権の拡大」を行い、その実現を通じて、世界への貢献を行なうと、堂々と宣言すべきである。

リスクとしての中国の強大化

拡大する中国の軍事・経済力は、日本にとって機会と危機を与えるリスクそのものである。

日本の安全保障上最大のリスクとなる台湾有事の際、日米間で、国益の食い違いが生じ、日本の人的・物的犠牲の上に、新たな北東アジアの権力構造が決められる恐れがある。

台湾が独立への動きを明らかにし、米中の軍事的衝突が差し迫った時、中国が、米軍基地を持つ日本に対して、核攻撃を行なうとの脅迫をしてくる可能性は否定できない。恐怖にかられた日本政府は、米国政府へ、中国に譲歩してくれと、泣きつくことになるであろうが、米国は、その時点で、米国本土への核攻撃の恐れはないので、中国に対して譲歩することは有り得ない。

その時こそが、戦後最大の日米関係の危機となる。

中国は、日米の対応を窺う目的で、日本にある米軍基地を、核兵器は積まないミサイル攻撃で叩く。米国は、日本そのものを守るのではなく、米国の北東アジア最大の軍事拠点である日本を守るために、中国本土に対して、それなりの通常兵器での反撃は行なうであろう。

しかし、不退転の決意においては、民主主義国家である米国よりも、全体主義国家である中国の方が強く、また、日本では、中国からの攻撃を避けるために、「日米安保撤廃」の国民の声は大きくなる。

よって、米国は、核戦争を辞さないとする中国との全面的対決は避ける。中国は、対米交渉の落としどころとして、「日米安保による日本の米国への軍事的隷属は認めるが、中国が台湾を支配することを、米国が認める」を提示してくると思われる。

その交渉力を強めるために、中国は、昨年の1月に、自らの気象衛星を弾道ミサイルで破壊するなど、米国に対する軍事的挑戦を行なっている。

そのような中国の挑戦に対して、ブッシュ政権は弱腰である。陳水偏政権は、今年の3月22日の総統選と同時に、台湾が、国連に加盟申請することの賛否を問う住民投票を行なう。しかし、ライス国務長官は、「住民投票は、不必要に、台湾海峡の緊張を高め、台湾住民にとって、利益にならない」と、住民投票を厳しく批判した。このままの日米関係では、対中国戦略で、隘路に陥ることを、米国は良く分かっているのである。

日本は、人口減少も続き、相対的な経済力そして技術力も衰退していく可能性が強い。日本が、強大化する中国に対して、自立性を保っていくことは、徐々に困難になっていくと思われる。エネルギー、食糧そして環境など、国民の死活に係わる問題での日中の軋轢は、既に始まっており、日本の自立を守る主権国家としての再生には、一刻の猶予も許されない。

集団的自衛権の拡大

国連憲章では、個別的自衛権を、「公然たる武力攻撃」と政治体制を打倒せんとする「政治的攻勢」の両方に対峙するものとしたが、集団的自衛権を、個別的自衛権より狭く、「武力攻撃」のみに、対応するものとした。しかし、グローバリゼーションの現代にあっては、集団的自衛権の対象は、軍事面に絞るのではなく、地球温暖化への対処、エネルギー、食糧、国際金融、情報通信などを含む総合的なものへと拡げるべきである。

よって、日米安保による集団的自衛権も、総合的なものにし、日米安保の対象地域を、地球そのものに、広げるべきである。グローバル空間を犯すグローバルテロ、気候変動、核汚染リスクなどに対して、技術力・金融力を持つ日本は、軍事だけの協力よりも、より幅広く協力ができ、さらに、地球益という錦の御旗を背景にして、対米交渉において、以前よりも、発言力が増すと思われる。

例えば、日本は、米国以外のインド、オーストラリアなどとも、集団安全保障に関する戦略対話も可能になり、米国との交渉において、幾つかのカードを手にすることができる。

集団的自衛権を行使できるようにすると、米国の軍事行動に巻き込まれる恐れが強いとする意見もある。しかし、現実には、集団的自衛権の行使にあたる米軍基地を認め、海上自衛隊によるインド洋での米艦などへ給油は、十分に集団的自衛権の行使に該当する。その流れの中で、集団的自衛権の行使はできないとする政府解釈は、「命乞い」として見られても仕方ない。

憲法の改正ではなく、新ガイドライン,テロ特別措置法、イラク特別措置法と、日米安全保障の対象を、「日本国の施設の下にある領域」以外に、広げてきた。まさしく、法の上での「下克上」を行なってきたのである。国家の主権者としての国民は、それを許すのではなく、憲法を改正することにより、集団的自衛権の行使を国家主権として認めるべきである。

なぜ日本独自の核抑止能力が必要か

先に述べたように、台湾危機が発生した場合、米中の核大国は、お互いを核兵器で攻撃することは避け、日本と台湾の犠牲で、北東アジアの権力構造の再編成を探っていくことになる。

これは、絶対に阻止しなければいけない日本の危機である。中国の核による脅迫に対して、米国の核抑止能力が、その日本の危機にリンクして、作動するようにしなくてはならない。そのためにも、米軍の地上配備核ミサイルを日本に持ち込む(米潜水艦による核兵器の日本持込は既成事実)、また、英国のように、核ミサイルを搭載した米原子力潜水艦の供与を受けるなどの核抑止戦略を検討すべきである。

それは、米国の核抑止能力の一部を、日本が、独自に使うことにつながり、中国は、日本に対して、核による脅迫をしにくくなる。さらに、日本は、米国への核攻撃を阻止する核兵器使用オプションを持ち、その「複合効果」により、中国に対する日米の核の抑止能力が高まる。

日本の核抑止能力を確かなものとするために、独自の早期警戒衛星や、指揮統制システムを持ち、情報、通信そして指揮統制権を、日本が握らなくてはいけない。

また、下記の理由により、台湾危機の備えに限らず、日本にとって、独自の核抑止能力の重要性が増している。

・米国の戦略核能力における相対的な力の衰退
・核拡散、核兵器の小型化、偶発性、第三国間の地域核戦争など、限定核戦争の可能性が高まっている。
・中国の核能力の増強
・北朝鮮の核開発
・NPT体制の崩壊
・現在の世界の安全保障は、核戦略が無い限り、構築できない。よって、自前の核抑止能力を持たない日本は、グローバルな安全保障戦略の蚊帳の外に置かれる。

総合的な集団安全保障機構創設へ

米国は、日本から軍事力を取り上げ、二度と歯向かわせないように、日本国憲法を制定した。その憲法の中には、国家非常事態への備えに関する項目は一切書かれていない。そして、軍事力と核抑止能力を持たない日本は、米国に頼るしかなかった。その米国への軍事的隷属を定めたものが、日米安保である。

すなわち、当時の米国は、日本を押さえ込むために、憲法と日米安保を、巧妙に組み合わせたのである。日本が、日米安保により、米国に守られると勝手に思うのは甘い。米国は、あくまでも、自国の利益のため、日本を軍事的隷属化に置いてあるだけである。

しかし、ロシアの復活、中国の軍事・経済における巨大化そしてEUの結束強化により、米国の相対的な力は衰え、核拡散とグローバルテロに、一国で立ち向かうことは困難である。ようやく、日本が、米国より独立できる機会が巡ってきたと思うべきである。

1960年、岸内閣は、「日米安全保障条約」を改定し、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」とした。その前文では、両国が、国際連合憲章に定める個別的または集団的自衛の固有の権利を有していることを確認している。これから、当時の日米の首脳が、将来の「日本の軍事力の開放」を、視野に置いていたことが窺える。

日本は、米国と、核抑止能力をメインとした軍事力のみの交渉だけでは、不利であることは否めない。日米は、グローバル空間を犯すテロ、環境破壊、原子力発電所の事故・核戦争による核汚染を、協力して押さえ込む総合的な集団的自衛権を、新たな日米安全保障の機軸にすべきである。

その新日米安全保障の枠組みの中で、日本が、独自の核抑止能力を持つこと、すなわち、米国の「核の傘」である核抑止能力の一部を、日本が、譲り受けることは、自衛における国家主権を、米国より、取り戻すことになり、他国との幅広い連帯を可能とする。

そして、それは、台頭する中国、ロシア、そして、欧州連合(EU)に負けない、日本、米国、カナダ、オーストラリア、インドそしてアセアン諸国などとの「総合的な集団安全保障機構」の創設につながると確信する。

<雑誌『財界」2月12日号掲載>

( 2008年02月12日 / 鈴木壮治 )

※記事の無断転用・掲載は、厳禁する
鈴木壮治 / SOJI SUZUKI
一橋総研 統括責任者
株式会社日本リスク管理研究所・代表取締役
NPO法人・新日華産業技術フォーラム・理事
財団法人・日本科学振興財団・理事
一般社団法人・日中文化経済交流発展基金会・理事
日本ラオス文化経済交流協会・理事

静岡県浜松市出身。米国ペンシルヴァニア大学・大学院ウォートンスクール経営学修士(MBA)取得後、1975年 三井物産入社(化学プラント部)同社で2年間の米国研修を経て、1987年シティバンク入社。デリバティブ・ヘッジファンド担当のアシスタント・バイス・プレジデント。1989年からはチェースマンハッタン銀行のバイス・プレジデントに就任。その後、1996年に株式会社日本リスク管理研究所設立・代表取締役就任。現在に至る。共著に『宣戦布告「NO」と言える日本経済』(光文社)、『国家意志のある「円」』(光文社)、『アメリカ信仰を捨てよ』(光文社)、『「日本浮上」プロジェクト』(ブックハウスジャパン)などがある。
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