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鈴木壮治の【言いたい放題】

第10回 グローバル時代の安全保障

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写真は、文意と関連なく、季節の風景を入れています。ロード毎に変わりますのでこちらもお楽しみ下さい。

 情報通信、金融は、既に、国を超えるグローバルな公共空間で、その活動を活発化させている。そして、そのグローバリゼーションの鬼子として、国を超えたテロリストグループが、米国、ロシアなどで、猛威を振るっている。その結果として、グローバリゼーションの舞台とも言うべき公共空間を痛めつけ、多くの人々、企業体などの活動を制約し、また、脅威に曝している。

 米国は、国に属さないテロリスト集団を、国と結び付け、アフガニスタン、イラクなどの国を爆撃、それらを、自らの傘下に組み入れた。公共空間は、国々が、連携し、守るべきものである。しかし、米国は、一人突出し、公共空間を侵したグローバルテロを、あえて、国・地域レベルの問題に矮小化し、その圧倒的な軍事力で、アフガニスタンとイラクを押え、中央アジア、中近東における国益を確保した。

 日本は、資源に乏しく、原料の輸入、工業製品の輸出というグローバルなモノの流れの中でしか、生きられない。グローバルテロを、公共空間を侵すものとして位置づけ、グローバルセキリュティの視点で、それに対処する安全保障戦略を構築し、実行すべきである。

 米国に、なかなかNOと言えなかったドイツは、フランスなどの欧州諸国と組み、EUをつくりあげ、イラクへの米軍主導の軍事攻撃に対し、敢然と、NOと言った。米国の単独軍事行動に立ち向かうには、それを超える安全保障の戦略が必要不可欠である。EUの欧州理事会は、2003年12月に、EUとしての防衛戦略を採決した。それは、国家間の紛争に対し、国際協調による関与策を、骨子としたものであった。さらに、2004年9月には、人間の安全保障を前面に押し出し、EUの新たなる時代の安全保障戦略を提唱した。

 EUの防衛戦略は、国の垣根が取れたグローバリゼーションの時代にあって、安全保障を、国の次元で捉えるのではなく、地球人としての個人の命、生活そして人権を守るという「思想」を持つ。

 そのようなEUの動きに比較し、日本は、どのように、グローバル時代の安全保障を考えているのであろうか。はっきりと言って、日本政府には、EUが提唱したような世界の安全保障に関する思想も無く、必然的に、安全保障のグランドデザインも持たない。その結果、残念なことに、米国のイラク攻撃に従うという形で、イラクへ自衛隊を派遣してしまった。

 北朝鮮問題、台湾と中国との緊張関係と、日本の位置する東アジアは、軍事的衝突のリスクが非常に高い地域である。日本は、このままでいくと、中国を潜在的な敵と見なす米国の軍事戦略に組み込まれ、国民の命と財産を危険に曝す可能性が強い。

 突出した力を持つ米国の軽はずみな軍事力を諌めることこそが、日本が、世界の安全保障のために果たす役割である。そのためには、日本は独自の安全保障に関する思想と、その具体案を練り、提唱し、勇気を持って実行すべきである。

 国を超えたテロ行為そして大量破壊兵器の脅威を、むりやりアフガニスタン、イラクの国に結び付け、国益のために、軍事力を行使し、その目的を達した米国。それは、まさしく、国家間の争いのみを前提としてきた国際法の隙間を突いた行為でもあり、エエネルギー資源、食糧資源の取り合いを前提とした旧来の地政学の範疇から、抜け出ていない戦略の実行に過ぎない。

 グローバル時代の安全保障戦略は、いかに、国家エゴを押え、人間の尊厳を犯すテロリズム、地域紛争、国家破綻などを防ぐためにある。そして、その実現は、国際的な協調でしか、為し得ない。国を超えたテロ行為、軍事行為に対し、多国協調が可能な国際法の確立への具体案、そして、地球環境を守り、個人を脅威に曝さない戦略を、現在の日本は持たず、その結果、日本の外交・軍事戦略は貧しくなっている。

( 2004年12月13日 / 鈴木壮治 )

※記事の無断転用・掲載は、厳禁する
鈴木壮治 / SOJI SUZUKI
一橋総研 統括責任者
株式会社日本リスク管理研究所・代表取締役
NPO法人・新日華産業技術フォーラム・理事
財団法人・日本科学振興財団・理事
一般社団法人・日中文化経済交流発展基金会・理事
日本ラオス文化経済交流協会・理事

静岡県浜松市出身。米国ペンシルヴァニア大学・大学院ウォートンスクール経営学修士(MBA)取得後、1975年 三井物産入社(化学プラント部)同社で2年間の米国研修を経て、1987年シティバンク入社。デリバティブ・ヘッジファンド担当のアシスタント・バイス・プレジデント。1989年からはチェースマンハッタン銀行のバイス・プレジデントに就任。その後、1996年に株式会社日本リスク管理研究所設立・代表取締役就任。現在に至る。共著に『宣戦布告「NO」と言える日本経済』(光文社)、『国家意志のある「円」』(光文社)、『アメリカ信仰を捨てよ』(光文社)、『「日本浮上」プロジェクト』(ブックハウスジャパン)などがある。
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