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鈴木壮治の【言いたい放題】

第6回 沖縄金融特区構想

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写真は、文意と関連なく、季節の風景を入れています。ロード毎に変わりますのでこちらもお楽しみ下さい。

 りそな銀行の事実上の破綻など、日本経済に明るさは見えない。イラク戦争の終結後、株価の上昇、原油価格の下落そして長期金利の低下により住宅着工件数の増加と、米国景気は上向く好材料もある。しかし、2001年からの所得税の減税効果も剥離し始め、雇用回復が遅れ、州などの地方財政の悪化などにいるデフレ圧力も顕在化しつつある。2003年前半の実質GDPの伸びは、2%程度に留まり、迫りくる来年の大統領選挙を前に、ブッシュ大統領は、景気停滞が再選へ影を落とすと、感じ始めているに違いない。米国資本にとって、日本企業再生ビジネス、邦銀の抱える不良資産のディールは美味しい商売であろう。特に、不動産を徹底的に買い叩き、しばらく保有していれば、日本をインフレに持っていけば、濡れ手に粟で巨額の利益を手にすることが可能である。自らの再選を確実にするため、日本にインフレを再現させ、そのバブル益を取り込んで、米国景気を浮揚させることを、ブッシュ大統領が考えても,なんら、不思議は無い。

 景気の気は、まさしく、気分の気であり、国民にやる気を起こさせるビッグなプロジェクトこそが望まれる。日本経済が抱える問題を解決するような壮大な構想として、沖縄金融特区を考えてみたい。政府が必死で進める経済特区は、言うなれば、万策尽きて困った本店首脳が、全国に散らばる支店に、「カネも知恵も出さない。今まで、煩く言っていたが、今後は、余り、口を挟まないから、自由にやって支店を立て直してくれ」というようなものであろう。その構想が抱える矛盾は幾つかある。例えば、一つの地域が、あるモノを安く輸入できる経済特区を認めた場合、そのモノを生産する他の地域に悪い影響を与えることになる。沖縄の金融業務特別地区は、そのような弊害を避けなくてはいけない。そして、インフレにより生じる利益を、米国などの海外資本に取られるのではなく、国民が、その恩恵に与れるような仕掛けを金融特区がつくるべきである。

 日本の抱える問題は次の通りである。?不良資産を抱えた銀行の金融機能停滞?地域経済の極度な不振と地方自治体の財政難?ジャパンマネーの海外への流出?リスクマネーの減少。これらの問題点を、解決する機能を、沖縄金融特区は持つべきである。そのような機能が力強く動き始めれば、日本経済が浮揚し始める。

 国内の金融とグローバルな金融の流れは、別々のものではなく、底流で当然のごとく繋がっているのである。バブルの勢いを背に、邦銀がグローバルマーケットに打って出ようとした矢先、その機先を制したのは、自己資本規制であった。その適用を受けるのは、国際金融業務に携わる大手銀行に絞るべきであった。しかし、日本政府は、地域金融を支え、国際金融業務に殆ど関係の無い地域金融機関にも、自己資本規制を課してしまったのである。自己資本比率4%以上を確保するため、地域金融機関は、必死になり、中小企業に貸してあった資金を引き揚げ、その総額は80兆円にもなった。欧米金融資本が牛耳るグローバル金融の強烈なる圧力に、政府は屈し、地域金融機関をその荒波から救うことができなかった。そして、その結果の貸し剥がしにより、中小・零細企業はその生存を脅かされることになった。よって、沖縄金融特区を構想する際に、地域金融とグローバル金融を同時に視野に置くことは、非常に大事であることはお分かりいただけると思う。ようは、地域経済(地方自治体と地方の企業)が、グローバルな直接金融マーケットから、資金を引っ張ることができる仕組みを沖縄金融特区は持つべきである。具体的には、地方自治体の持つ資産を証券化して、グロバールマーケットの投資家に販売することもできる。また、地方自治体が進めるPFI事業への、グローバルマーケットのリスクマネーの取り入れも行うべきである。

 国内の資金の流れも変えなくては、日本経済の再生はありえない。日本のカネは、民から官へという大きな流れの中で動いてきた。例えば、1990年と2001年の流れを比較すると、株式・社債の個人保有額は、208兆円から、143兆円と減少し、郵便貯金・簡易保険・年金への個人マネーの流入は、270兆円から、なんと、516兆円と急増している。すなわち、リスクマネーが減少し、預貯金に個人のマネーは流れ込み、眠ったままである。この眠ったままの資金に活を入れ、個人マネーをリスクマネーにするには、魅力のある金融・投資商品の開発そして販売が必要不可欠である。それならば、米国のハゲタカファンドが狙っている不良資産に、国民が投資できる国民参加型の不良資産投資ファンドそして企業再生ファンドを、組成し、沖縄金融特区でその取引が行えるようにすればよい。それならば、今後、日本がインフレになった場合でも、その利益を米国勢に持っていかれることなく、国民がその恩恵に与ることができるのである。

 金融特区というと、ニューヨークの摩天楼に象徴される国際金融センターをイメージする人々も多いであろう。しかし、金融センターなる建物をいくら建てても仕方の無いことである。中小企業金融の充実のための石原知事提唱の「東京都による銀行創設構想」は、既成の金融機関に対するインパクトは強い。その本質は、新たな金融機能、すなわち、リスクの仲介機能を創りだすことであろう。中小企業へも無担保ローンは、企業の信用リスクを取ることであり、不動産担保ローンとは異なる本来の金融機能の提供である。しかし、当初は、資産の運用と保証業務を新銀行は他に任せることから始めるようである。沖縄金融特区も、やはり、新たな金融機能を創設する意気込みと戦略で、構想を練るべきであろう。世界の知恵を集めるためには、米国で注目を集めつつある「クラブ」方式が良いと思われる。クラブとは、会社組織とは異なり、世界の才能を集合させるのに適した組織であり、通常は、NPO法人として、専門家のグローバルネットワークの要となるものである。米国では、既に、バイオ関連のクラブ(NPO法人)が、世界の最先端のバイオ関連の研究者、バイオ関連企業を網羅したネットワークを結成し、活動を始めている。もし、バイオ関連の研究そして企業家に資金が要る場合は、そのクラブの傘下に投資ファンドあるいは事業会社を持つことも可能である。沖縄金融特区に世界の超一流の金融頭脳がネットワークされるグローバル金融クラブを創設すべきである。

 以上の構想に加え、円の国際化をすすめるために、アジアの企業に円建て社債を発行してもらうアィディアも聞いているが、素晴らしい考えである。円の国際化、そして、円の日本への還流システムを実現するためには、従来から言われているように、残高30兆円にもなる政府短期証券を、企業、個人そして非居住者にも自由に買ってもらえるようにすべきである。アジアの情報通信・金融・運輸のハブ機能を持とうとする東京と、沖縄がうまく組めば、お互いが補完しあうダブルハブとなり、アジアハブをグローバルハブに結びつけることになるであろう。

( 2003年09月05日 / 鈴木壮治 )

※記事の無断転用・掲載は、厳禁する
鈴木壮治 / SOJI SUZUKI
一橋総研 統括責任者
株式会社日本リスク管理研究所・代表取締役
NPO法人・新日華産業技術フォーラム・理事
財団法人・日本科学振興財団・理事
一般社団法人・日中文化経済交流発展基金会・理事
日本ラオス文化経済交流協会・理事

静岡県浜松市出身。米国ペンシルヴァニア大学・大学院ウォートンスクール経営学修士(MBA)取得後、1975年 三井物産入社(化学プラント部)同社で2年間の米国研修を経て、1987年シティバンク入社。デリバティブ・ヘッジファンド担当のアシスタント・バイス・プレジデント。1989年からはチェースマンハッタン銀行のバイス・プレジデントに就任。その後、1996年に株式会社日本リスク管理研究所設立・代表取締役就任。現在に至る。共著に『宣戦布告「NO」と言える日本経済』(光文社)、『国家意志のある「円」』(光文社)、『アメリカ信仰を捨てよ』(光文社)、『「日本浮上」プロジェクト』(ブックハウスジャパン)などがある。
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■第1回 いまこそ改革に民の力を
■第2回 グローバル時代の機密費とは
■第3回 構造改革特区の問題点
■第4回 闘う気があるのか、日本経済
■第5回 イラク・フセイン政権崩壊に思う
■第6回 沖縄金融特区構想
■第7回 国際金融から、日本の大戦略を考える
■第8回 李登輝氏と会い、憲法を考える
■第9回 北朝鮮と日本の防衛
■第10回 グローバル時代の安全保障
■第11回 日本の未来戦略
■第12回 国際金融という闘いの場
■第13回 日本経済再生戦略
■第14回 日本の安全保障戦略
■第15回 日本の外交戦略
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■第17回 日本の都市革命
■第18回 郵政民営化と国家安全保障
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■第34回 WIKILEAKSの「国家機密漏洩」を考える
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