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鈴木壮治の【言いたい放題】

第5回 イラク・フセイン政権崩壊に思う

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写真は、文意と関連なく、季節の風景を入れています。ロード毎に変わりますのでこちらもお楽しみ下さい。

 米軍のイラクへの侵攻が「成功」し、フセイン政権は崩壊した。米国が、イラクを支配下に置く理由として、イラクの原油の利権を挙げる人々が多いが、それは目的の一つにしか過ぎない。米国の狙いはもっと大きいものである。それは、米国をグローバルマーケットのハブ機能を持つ支配国家にし、世界のマネー、資源、情報そして運輸などを牛耳ろうというものであろう。そしてそれに反する勢力は、腕力で叩きのめすというのが米国の本音であろう。

 その米国にとって、2001年の9月11日の米国中枢部へのテロは、その大戦略への許されない挑戦であった筈である。その温床にもなっている悪の枢軸国家を、米国に従わせようというのが、今回のイラクへの鉄槌である。無論、中東でイスラム諸国と血みどろの闘いを続けているイスラエルの意志が、そこに反映されている。ユダヤ系の人々は、米国という強力なインフラを巧みに使おうとしているグループでもある。イスラム諸国の一角が米国の強い影響下になることは、イスラエルにとって、好ましいことなのであろう。

 米国というシステムのダイナミックスさは、リスクを取ることに最大の価値を見出すことにある。イラク攻撃そしてフセイン政権打倒に時間がかかるようであれば、原油価格も高騰し、株価は低迷し、米国発の世界経済の恐慌も考えられた。そのようなリスクを取ってまでもやる米国を、どこの国も止めることはできなかった。イラク攻撃に軍を派遣せず、自国民に血を流させることはなくても、世界経済を恐慌のリスクに曝せるブッシュの独断専行を看過してしまったことは、ある意味では、米国へのある種の隷属化を示している。

 イラクを攻撃し、米国の影響下に置こうとい戦略は、巨大なリスクテイクであった。短期的にはリスクが高まるが、それをうまくやりおおせば、中長期的に中東を安定した軍事・政治的な状況に、もっていけると判断したのであろう。しかし、イラクを攻撃することにより、他のイスラム諸国の反感を買い、米国・イスラエルへの結びつきに対して、憎しみが増し、それがさらなるテロ行為を生む可能性を高めるであろう。中東諸国は、中国にとっては大事な戦略的な基盤である。それを米国に荒らされることは、中国にとって、戦略上、許し難いはずである。中国は、イスラム諸国を応援せざるを得ないであろう。このように、パンドラの箱を、こじ開けているのが、ブッシュ政権である。シオニストであるユダヤ勢力は、中東での勢力拡大を目指すものである。その利己的な国家戦略に米国が使われるとしたら、世界にとって、悲しいことである。世界の超軍事国家である米国のパワーをどのように使うかという戦略を、日本は持たなくてはいけない。それなくしては、米国の軍事力の桎梏の元、米国に従属し、国民の命そして財産を米国に委ねることになってしまう。

 日米が対等なパートナーシップを築くためには、まず、米国への精神的な劣等感を払いのけることである。たった、一度の「喧嘩」で米国に負けたからと言って、しょげることは無い。米国が採用したくなるようなグローバル戦略、特に中東の安定化戦略を、日本が提言すべきである。そのためには、シオニスト右派が米国のインフラを使って、進めようとしている戦略を分析し、対処する必要がある。米国のイラク攻撃に象徴される中東戦略の大欠陥は、イラクを平定した後の具体的な中東の安定化戦略を持たないことである。そこに、日本が戦後初めて、グローバルな視野を持つ戦略国家としてデビューするチャンスがあるとおもわれる。中東が乱れることは、米国はその軍事力を中東に割かなくてはならず、北東アジアへの米軍の力の配分が小さくなるのである。これは、中国にとっては、アジアでの覇権を握る上で、有利であろう。しかし、アジアでの主導権を中国と争う日本にとって、好ましくない。中東の安定は、日本にとって非常に戦略的価値が高いものであるとの認識が必要である。

( 2003年04月11日 / 鈴木壮治 )

※記事の無断転用・掲載は、厳禁する
鈴木壮治 / SOJI SUZUKI
一橋総研 統括責任者
株式会社日本リスク管理研究所・代表取締役
NPO法人・新日華産業技術フォーラム・理事
財団法人・日本科学振興財団・理事
一般社団法人・日中文化経済交流発展基金会・理事
日本ラオス文化経済交流協会・理事

静岡県浜松市出身。米国ペンシルヴァニア大学・大学院ウォートンスクール経営学修士(MBA)取得後、1975年 三井物産入社(化学プラント部)同社で2年間の米国研修を経て、1987年シティバンク入社。デリバティブ・ヘッジファンド担当のアシスタント・バイス・プレジデント。1989年からはチェースマンハッタン銀行のバイス・プレジデントに就任。その後、1996年に株式会社日本リスク管理研究所設立・代表取締役就任。現在に至る。共著に『宣戦布告「NO」と言える日本経済』(光文社)、『国家意志のある「円」』(光文社)、『アメリカ信仰を捨てよ』(光文社)、『「日本浮上」プロジェクト』(ブックハウスジャパン)などがある。
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■第8回 李登輝氏と会い、憲法を考える
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