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鈴木壮治の【言いたい放題】

第4回 闘う気があるのか、日本経済

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写真は、文意と関連なく、季節の風景を入れています。ロード毎に変わりますのでこちらもお楽しみ下さい。

 グローバルマーケットを闘いの場とするならば、日本の企業も、それを支える日本という国家も、闘う者として、「心技体」を鍛え、勝ち残るしかない。日本経済、いや日本そのものが、低迷するのは、その「心」の弱さである。一月下旬に、ワシントンのブッシュ政権の要人に会う機会があった。イラク攻撃という国家としてのリスクテイクを行わんとする気概と冷徹な戦略は、彼らの表情から、覗うことができた。他国の富、資源、優秀な頭脳・テクノロジーを、国益のために押さえる、明確な国家意思と戦略を持つ米国に対して、日本はどうすべきか。その憂国の思いの中、グローバル金融に強い友人より、「三井住友フィナンシャル・グループが、ゴールドマンサックスに優先株を持ってもらうが、その条件が、国辱的である」との指摘を受けた。

 約1500億円の普通株への転換権付き優先株を、ゴールドマンサックスに買ってもらうのだが、三井住友フィナンシャル・グループが、その見返りにつけた条件に唖然とした。年率4.5%の配当に加え、優先株取得より、2年間経過すれば、取得時に比べ、株価が下がった場合、転換株価を1/3にまで下げることができる。誤解を恐れずに言えば、米系のヘッジファンドが、三井住友フィナンシャル・グループの株を売り浴びせ、しこたま儲けた後、ゴールドマンサックスは、優先株を、当初の転換価格の1/3で、普通株に転換させることができるのである。つまり、場合によっては、当初の転換株価で得られたであろう株数の三倍もの普通株を、取得できるのである。さらに、悲しい思いがしたのは、そのゴールドマンサックスの優先株取得資金を、三井住友フィナンシャル・グループが提供するがごときの条件である。最大21.25億ドル(約2500億円)もの、信用補完をゴールドマンサックスの子会社の借り入れに対して提供し、その担保として、ゴールドマンサックスが発行する債券(デマンドノート)、13億7500万ドルを購入するものである。

 さらに追い討ちをかけるように、三井住友フィナンシャル・グループは、二月中旬に、3000億円もの優先株を発行し、それを、例のゴールドマンサックスが、欧米の機関投資家にはめ込むことを、取締役会で決定したという。そして、この優先株は、今年の四月以降、普通株に転換できるという。開いた口が塞がらない。国有化を恐れ、一般株主への配慮を忘れ、米国資本に圧倒的に有利な条件を押し付けられた現経営陣に、バンカーとしての意地も、日本人としての誇りも無い。 三井住友フィナンシャル・グループのトップは、何を恐れて、この様な屈辱的な条件を受けいれたのか。そして、一般株主としての国民の利益を軽視し、一般大衆の汗と涙の貯金を預かる身でありながら、米国の投資銀行であるゴールドマンサックスの優先株・購入資金手当にも力を貸し、助けてもらわなくてはいけないのか。小泉政権は、なぜ、ここまで、三井住友フィナンシャル・グループを追い込み、日本にとって屈辱的なディールを看過したのか。銀行の国有化を迫る竹中プログラムなるものが、米国勢に有利な結果に終ることを、国民にいったいどのように説明するのか。企業トップは、自らの保身ではなく、本当に守るべきものを忘れている。外資の導入により、国有化を避け、経営陣の首を守ったとしても、日本の金融を支えてきた矜持を失って、それで良いのか。日本経済の再生がうまくいかないのは、国家意識無く漂流する日本のリーダーにある。それを端的に示したのが、今回の三井住友フィナンシャル・グループの外資導入である。国益を守る「心」が欠如している。

 金融・経済の問題を解決するには、金融・経済だけの視点と戦略では、無理である。バブルがはじけ、10年以上も経過しているのに、日本経済の先には、明かりが見えない。国家の力を効率的に引き出す統合戦略とグローバルな視野に欠けることが、その大きな理由である。そして、それを支えるのが、国民の財産とテクノロジーを守ろうとする強い国家意志である。それは、国民の命を守る国家としての防衛戦略という軸にしっかりと繋がるものである。クリントン前大統領は、1993年、対日金融経済戦略を練るために、政策スタッフを、国防の要・ペンタゴンに集めた。これこそ、クリントンの大統領としての、対日金融経済戦略を、「国家としての闘い」とする強烈なメッセージであった。その様な米国の戦略的アプローチの前に、日本はなすがままであった。それにしても、日本の金融戦略は、稚拙である。それは、切れば血が出る金融の本質を知らない連中が金融を牛耳ってきたことによる。恐ろしいことである。本来ならば、国際金融業務を行う大手金融機関のみに、適用すべきBISの自己資本規制を、地域金融を担う中小金融機関にも課し、中小企業そして零細企業への金融を細めてしまった。その結果、日本が生きていくために必要な珠玉のような製造技術・ノウハウが、企業の衰退と同じ運命を辿ることになってしまっている。さらに、国益上問題なのは、米国資本が、優れた技術を持つ日本の中小企業を買収し、それを中国に持っていき、収益を上げようとしている事実である。ジャパンマネーを米国に恣にされ、技術を中国に取られて、日本は、21世紀に、どうやって食べていくのか。

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鈴木壮治 / SOJI SUZUKI
一橋総研 統括責任者
株式会社日本リスク管理研究所・代表取締役
NPO法人・新日華産業技術フォーラム・理事
財団法人・日本科学振興財団・理事
一般社団法人・日中文化経済交流発展基金会・理事
日本ラオス文化経済交流協会・理事

静岡県浜松市出身。米国ペンシルヴァニア大学・大学院ウォートンスクール経営学修士(MBA)取得後、1975年 三井物産入社(化学プラント部)同社で2年間の米国研修を経て、1987年シティバンク入社。デリバティブ・ヘッジファンド担当のアシスタント・バイス・プレジデント。1989年からはチェースマンハッタン銀行のバイス・プレジデントに就任。その後、1996年に株式会社日本リスク管理研究所設立・代表取締役就任。現在に至る。共著に『宣戦布告「NO」と言える日本経済』(光文社)、『国家意志のある「円」』(光文社)、『アメリカ信仰を捨てよ』(光文社)、『「日本浮上」プロジェクト』(ブックハウスジャパン)などがある。
 バックナンバー
■第1回 いまこそ改革に民の力を
■第2回 グローバル時代の機密費とは
■第3回 構造改革特区の問題点
■第4回 闘う気があるのか、日本経済
■第5回 イラク・フセイン政権崩壊に思う
■第6回 沖縄金融特区構想
■第7回 国際金融から、日本の大戦略を考える
■第8回 李登輝氏と会い、憲法を考える
■第9回 北朝鮮と日本の防衛
■第10回 グローバル時代の安全保障
■第11回 日本の未来戦略
■第12回 国際金融という闘いの場
■第13回 日本経済再生戦略
■第14回 日本の安全保障戦略
■第15回 日本の外交戦略
■第16回 日本のエネルギー戦略
■第17回 日本の都市革命
■第18回 郵政民営化と国家安全保障
■第19回 日本の情報通信戦略
■第20回 未成熟な政治マーケット
■第21回 日本を守るのは国民
■第22回 今こそ議論すべき「日本の核抑止力」
■第23回 日米FTA・日中FTAの可能性を問う
■第24回 目覚めよ、日本国民!
■第25回 安倍首相の突然の辞任と日本の安全保障
■第26回 日米関係再構築と環境安全保障戦略
■第27回 グローバル時代の集団的自衛権構想
■第28回 「NOと言える日本」からの脱却とグローバル経済安全保障
■第29回 武士道の倫理は、米国の力と資本の論理を超える!
■第30回 オバマ・アメリカに対して
■第31回 政治を取り戻せ日本!
■第32回 安全保障問題と日本
■第33回 新自由主義を超える日本の心
■第34回 WIKILEAKSの「国家機密漏洩」を考える
■第35回 今望まれるインドとの戦略的連携
■第36回 東日本復興の理念「フクシマ・コンセンサス」
■第37回 日本の共同体思想が世界経済を救う
■第38回 欧米危機から学ぶ「国家と企業の連携」
■第39回 日本よ、デフレ脱却のモデルとなれ
■第40回 グローバル濁流へ対峙する「新国家主義」
■第41回 アルジェリアの悲劇 − 問われる日本国家の国民を守る力
■第42回 ユーラシアのエネルギー地政的「周辺国家」からの脱却
■第43回 日米原子力協力協定更新と電力システム改革
■第44回 「2020年東京オリンピック開催危機」打破のための日本の安全保障戦略
■第45回 尖閣諸島・北方領土に繋がるウクライナ危機
■第46回 地方創生と脱国家時代のナショナリズム
■第47回 安全保障法制考究と日本の安全保障
■第47回 安保法制そしてアベノミクスで日本を守る!
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