HRI
 トップページ > コラム > 酒井吉廣の【米国・これが真実】 > 第20回 2012年:アイオワ州党員集会投票結果と共和党の各大統領候補についてご利用に際して個人情報保護方針 
トップページ
書籍
イベント
一橋総研とは
リンク
お問い合わせ
ご注意
コラム コラム
※記事の無断転用・掲載は、厳禁する
酒井吉廣の″米国・これが真実!″

第20回 2012年:アイオワ州党員集会投票結果と共和党の各大統領候補について

コラム一覧に戻る プリント用のページを開く このコラムを知人に知らせる
Page 1 of 1
写真は、文意と関連なく、季節の風景を入れています。ロード毎に変わりますのでこちらもお楽しみ下さい。

 いよいよオバマ大統領が再選を賭ける大統領選挙の年が明けた。有力候補者不在との評判のまま、共和党が1月3日のアイオワ州党員集会を嚆矢として、大統領候補者選びの予備選を開始した。国力の衰退につき、世界中のメディア、学者、関係国の閣僚等から指摘され始めた米国が、ここで低迷に待ったをかけられるのかどうかの国運を託す大統領を選ぶ一年間のイベントが始まるのである。筆者自身、大統領選挙を身近でウォッチするのはこれが三回目だが(共和党側に近い筆者の目でみると)、今回は、本命がいないというより、候補者のバックグラウンドがバラエティに富んでいて本命を決め難いということが実情だと感じる。

 こうした状況の下で行われた米国最初の予備選であるアイオワ州党員集会は、昔から宗教保守などが結果を左右するところで、、米国の大統領になれる人材というよりも、投票者である自分達と同じ価値観を持つ人材、の方が勝てる傾向がある。2008年の予備選挙の際にもハッカビー氏が彼の持つ宗教的バックグラウンド等が効果を発揮して勝利したが、予備選全体の結果では負けている。

 ところが、今回は、共和党の大統領候補として最有力のロムニー氏(得票率24.6%、なお本稿以降での大統領候補の呼び名として米国のメディアが採用しているものを採用)が、僅かな差ながら宗教的バックグラウンドの強いサントロム氏(同24.5%)、および自由主義者として古き良き米国の代表するようなポール氏(同21.4%)を抑えて勝利した。この結果は、共和党としての思想よりも経済などの立て直しを必要とする現在の米国の状況を反映したものであろう。今回の結果を見る限り、四位のギングリッジ氏(同13.3%)や五位のペリー氏(同10.3%)など、他候補も今後の展開次第では勝利の可能性ありとの見方が可能と言えるだろう。これからの大混戦を予想させるものだ。

 以下では、アイオワ州党員集会投票の結果が示唆する十一か月に及ぶ大統領選挙と、これからの長丁場を見ていく上での最初のステップとして、筆者の目で見た共和党候補について簡単に敷衍しておきたい。因みに、各人の説明にある通り、大統領候補者は、ティーパーティーが推す小さな政府を目指す保守層と、共和党エスタブリッシュメントの二つの支持を如何に上手く獲得できるかで人気が決まってきており、今後もその傾向は続くものと予想される。

(以下の説明はアルファベット順)

Jon Huntsman (元ユタ州知事、前駐中国大使)

(アイオワ州党員集会投票結果0.6%)

 富裕層出身でモルモン教のミッションとして台湾に滞在した経歴を持つ彼は中国語を流暢に操り、中国人の子供をわが子として育てている。また、オバマ政権での中国大使としての経歴もあり、米国の近未来における仮想敵国に精通した政治家として、また民主党にも緊密な関係を持つ共和党員として、更にはディーパーティーなど極端な流れに対抗する穏健派として、一時は注目を浴びた。しかし、この彼の強みが逆に「大統領選挙に勝てる男」というイメージに結びつかず、現在の人気は低迷気味。

Michele Bachmann (ミネソタ州選出下院議員)

(アイオワ州党員集会投票結果5.0%)

 ティーパーティーの勢いに乗って昨年8月のアイオワ州の世論調査で共和党候補のトップとなったが、その後は、オバマ大統領に対する反論等の内容が共和党のエスタブリッシュメントに受けず、今一つ人気が続かず。

Mitt Romney (前マサチューセッツ知事、2008年の大統領選挙候補者)

 現段階でギングリッジ氏と大統領候補者選びのトップ争いをしており、アイオワ党員集会でも勝利した。四年前の敗退をばねにした組織と、ブッシュ政権下での経済顧問を自身の経済顧問につけたプロ共和党の政策と民主党員にも受け入れられる中道よりの政策を混ぜ合わせた経済政策案を持つなど、本選挙の勝利も念頭に置いた準備に余念がない。しかし、モルモン教徒であることともに、堕胎や離婚などについての穏健な立場がネックとなると言われている。既に僅かながらも回復の兆しになる米国経済の下で、米国民が更なる景気回復への注目度を高めるならば、8月の党大会での選出確率が高まっていくだろう。

Newt Gingrich (前下院議長)

 現段階でロムニー氏と大統領候補者選びのトップ争いをしているが、アイオワ党員集会では四位と低迷した。貧困な家庭出身の政治家として、本来であればアメリカン・ドリームを体現すると注目されてよく、政治家としての経歴もクリントン政権下で1995年に政府が一時的に機能停止した際のやりとりなども輝かしいものがある。しかし、二回の離婚歴とその際の背景、結構危ない橋を渡る性格による経験が彼のネックとなっている。メディアが昨年末あたりから彼のバックグラウンドを詳細に掲載しており、これを米国民がどう受け取るかが今後の予備選を戦う鍵となろう。米国大統領は様々な点で米国民が認める人物である、というのが一つの重要な要素である。

Rick Perry (テキサス州知事)

 一度は共和党のトップ候補にもなった政治的な手腕が売りで、社会問題に保守的な発想で対応する政治家、ティーパーティーが好む考えを持つ政治家。しかし、現在は、ディベートでのパフォーマンス力の弱さに加え、テキサス州の一つの重要政策である違法移民への対応が生ぬるいとの批判も浴びて、人気が低迷している。また、テキサスは二人のブッシュ大統領の出身州ながら、ブッシュ家との関係が深いわけでもなく、また共和党エスタブリッシュメントとの距離があることも弱みと見られている。

Rick Santorum(前ペンシルバニア州選出上院議員)

 Social Conservativeの強い支持を背景に、予備選挙に一石を投げ込んでいる。同性結婚やイラク戦争などへの強硬な意見などが売り。アイオワ州党員集会投票結果でもロムニー氏に僅か0.1%差の二位となった。

Ron Paul (テキサス州選出下院議員)

 自由主義者の代表格。堕胎まで含めた人権に対して「神が与えた権利」をどう考えるかまでの生粋の自由主義的な考え方を持っていると評価され、所謂、古き良き時代の米国の代表というイメージもある。ティーパーティーの支持も強く、ミット・ロムニー氏と予備選のトップを争う力を持っており、昨年12月は彼が候補者の中でのトップだったと見ることもできる。ただ、世界に展開する米軍の規模縮小など、政策案では必ずしも共和党全体の賛同を得られるとは言えないものもある。

( 2012年01月10日 / 酒井吉廣 )

※記事の無断転用・掲載は、厳禁する
酒井吉廣 / YOSHIHIRO SAKAI
一橋総合研究所 正会員
日本銀行にて、営業局(現金融市場局)、考査局副調査役、信用機構室調査役(マクロ・マネタリーポリシー、ミクロ・プルーデンスポリシー、およびペイメント・システムの中央銀行の三機能に従事)など十五年勤務。その後、アメリカ公共政策研究所(American Enterprise Institute)に主任研究員として三年勤務。現在は、戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Study)客員研究員、および関西学院大学非常勤講師。米国犯罪学会員、米国企業再生委員会会員、国際公共経済学会会員、米国リスクマネジメント協会会員。APECや日米財界人会議など欧米での講演、TV・ラジオ出演、FTやInternational Economyなどの英字新聞・雑誌への寄稿多数。「ハンドブック・CMBS(商業用不動産ローン担保証券)」(エール大学ファボッチ教授著)の翻訳を金融財政事情研究会より、「逆プラザ合意」をオーエス出版より出版。
 バックナンバー
■第1回 ネオコンの経済政策
■第2回 年内には3億人を超える人口大国の強み
■第3回 中南米支配の“象徴”ブレイディ・ボンドの消滅
■第4回 人気低迷下、経済運営に喘ぐブッシュ政権
■第5回 サブプライムの次は医療・保険問題
■第6回サブプライム問題が世界経済に影響を与える理由
■第7回 マクロ経済が意外と落ちない理由
■第8回 昨年(2007年)は金融技術に足をすくわれた
■第9回 大統領選挙の年は景気刺激効果が強いが・・・
■第10回 米国経済の今後を占う“対米投資”
■第11回 カストロの引退でキューバはどう変わるか
■第12回 金融・証券市場混乱でドル安は続く模様
■第13回 大学のビジネス化で大成功し教育水準も向上
■第14回 ペイリンは初の副大統領となるのか?
■第15回 オバマに軍配(第一回目のディベート)
■第16回 副大統領候補のディベート:ペイリンは実は負けた?
■第17回 オバマがリードを拡大(第二回目のディベート)
■第18回 大統領選挙まであと二週間:三回目のディベートとその後
■第19回 「911メモリアル式典」から「ウォールストリート占拠」へ 〜普通に戻りたい米国民感情
■第20回 2012年:アイオワ州党員集会投票結果と共和党の各大統領候補について
TOP PAGEこのページのいちばん上へ
ご利用に際して個人情報保護方針 Copyright (c) 2002-2019 Hitotsubashi Research Institute. All Rights Reserved.