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酒井吉廣の″米国・これが真実!″

第十四回 ペイリンは初の副大統領となるのか?

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写真は、文意と関連なく、季節の風景を入れています。ロード毎に変わりますのでこちらもお楽しみ下さい。

ヒラリーが抱えていた限界とペイリンの持つ可能性

  今春までの米国の雰囲気を総括してみると、日本で注目されているほどには、ヒラリーが民主党の大統領候補に選出されると予想していた米国人は意外と少ないように思う。それはヒラリーの人格や能力、または人気という以上に、オバマの変革に対する期待が大きかったからだ。また、ヒラリーが民主党の大統領候補となった場合の方が、共和党にとっては闘い易いという話もワシントンではよく聞かされた。それはヒラリーのブレインが夫であるビル・クリントン時のものであり、全く未知数の旋風が吹き荒れるよりは楽だ、といものであったように感じる。

 ただ、熱狂的なヒラリー支持者が民主党内に多いのは誰もが知る事実で、それが民主党大会を終わった現在(9月初)でも、ヒラリーを負かしたオバマではなく共和党候補のマケインに投票することを考える、という意見が少なくない理由でもある。

 逆を言えば、夫が現職大統領時代に発覚したモニカ・ルインスキーとの浮気にも耐え、元来の高い能力と知識、そして女性的な一面を常にカバーしながらの彼女の上院議員としての働きは、彼女を支持する人々の目には極めて強いカリスマ性を持つリーダーと映ってきたに違いない。その彼女の長年の夢、そして米国初の女性大統領という米国人女性の何割かが持つ夢が破れることは、彼女の支持者にとって簡単には受け入れることが出来ないのだろう。

 しかし、この一種独特なヒラリーとヒラリー支援グループの持つ雰囲気は、同じ民主党でも、もう少し普通に大統領選挙を考える立場からは少し行き過ぎに感じられたのも事実ではないだろうか。実際、筆者の住むNYは民主党の牙城であるが、彼女に対する評価は二つに分かれていた。それがNYの地元議員の間でもだ。

 私は、ヒラリーの話を生で聞いたことがあるが、知的女性に特有の落ち着いたやや低いトーンの声で、しかし明るさを失わず、落ち着いていて、質問に対する回答もユーモアがある。個人的には好きな政治家の一人であり、人間として信頼できる人だと思う。だから彼女の支持者があきらめ切れない気持ちもわかるような気がする。だから、残念ながら、今回の選挙では彼女は勝てなかったものの、マケインの現在の年齢を考えれば、ヒラリーにも次回もう一度チャンスを活かして挑戦して貰いたいという気持ちがある。

 こうした中で、共和党のマケイン大統領候補はアラスカ州知事のペイリン女史を副大統領候補に選んだ。彼が選出を発表してから彼女が党大会でスピーチするまでの五日間は、彼女のバックグラウンドなどの話題がメディアを賑わせたが、党大会でのスピーチは彼女をもっと大きな人物として作り上げようとする共和党キャンペーン陣の思惑が成功に結びつく結果となった。

 彼女のスピーチは、非常にゆっくりと聴衆(全てが共和党員)の拍手との巧みなバランスによって、「人々を痺れさせるような力を持っていた」(米各紙)との評価を受けた。しかし、実際にそれを聞いていた私には、アメリカ人政治家の割には具体的な中身のないスピーチだなとの印象があった。むしろ、ワンフレーズ・ポリティクスと言われた小泉首相の講演を思い出させる感じのものであった。つまり、言っている内容の大きさや、目指そうとしている総論の崇高さはあるものの、それを実現するための具体性はなく、むしろそれに対してのライバルであるオバマ陣営の批判の言葉が冴えるという感じだった。

 しかし、日本でもそうであったように、ポピュリズムは政治評論家や知識人がどう批判しようとも、米国にも根付いており、実際に選挙の勝利を約束する重要な手段が投票者の人気をとることが全て、である以上、これを無視することは出来ない。実際、共和党のキャンペーンマネージャーはハリウッドからやってきた腕利きの人材であり、ハリウッド張りの映画的な雰囲気を作り出してでも選挙を勝利に結び付けようと考えているはずだ。しかも、それは、昔からあった傾向がよりシステマティックになっただけのことなのだから、それは所与のものとして受け取らないと、大統領選挙の行方を見誤ってしまう。

 とにかく、彼女の登場は、共和党支持者にとっては、八年間続いた政権を共和党が維持し、マケインによって強いアメリカの復活と、経済の再繁栄を実現するための切符を手にする重要なステップと感じられた筈である。

 ヒラリーにない別の側面を持つペイリンには、どのようなバックグラウンドがあるかなど、次は、もう少し別の観点から彼女を見ておきたい。

( 2008年09月10日 / 酒井吉廣 )

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酒井吉廣 / YOSHIHIRO SAKAI
一橋総合研究所 正会員
日本銀行にて、営業局(現金融市場局)、考査局副調査役、信用機構室調査役(マクロ・マネタリーポリシー、ミクロ・プルーデンスポリシー、およびペイメント・システムの中央銀行の三機能に従事)など十五年勤務。その後、アメリカ公共政策研究所(American Enterprise Institute)に主任研究員として三年勤務。現在は、戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Study)客員研究員、および関西学院大学非常勤講師。米国犯罪学会員、米国企業再生委員会会員、国際公共経済学会会員、米国リスクマネジメント協会会員。APECや日米財界人会議など欧米での講演、TV・ラジオ出演、FTやInternational Economyなどの英字新聞・雑誌への寄稿多数。「ハンドブック・CMBS(商業用不動産ローン担保証券)」(エール大学ファボッチ教授著)の翻訳を金融財政事情研究会より、「逆プラザ合意」をオーエス出版より出版。
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