HRI
 トップページ > コラム > 酒井吉廣の【米国・これが真実】 > 第四回 人気低迷下、経済運営に喘ぐブッシュ政権ご利用に際して個人情報保護方針 
トップページ
書籍
イベント
一橋総研とは
リンク
お問い合わせ
ご注意
コラム コラム
※記事の無断転用・掲載は、厳禁する
酒井吉廣の″米国・これが真実!″

第四回 人気低迷下、経済運営に喘ぐブッシュ政権

コラム一覧に戻る プリント用のページを開く このコラムを知人に知らせる
Page 1 of 1
写真は、文意と関連なく、季節の風景を入れています。ロード毎に変わりますのでこちらもお楽しみ下さい。

目玉政策、減税法案の通過もままならず

 ブッシュ大統領の支持率が34%と大統領就任以来の最低を記録した。9−11直後に90%という最高の支持率を記録した彼も、ハリケーン・カタリナによる被害が発生した際の対応の失敗や、イラク戦争の泥沼化など、様々な失敗が積み重なったことで人気低迷に直面することとなった。テロリストとの戦いを宣言して国民の高い支持を得た強いリーダーが、テロリストとの戦いに勝利の終止符を打てず、国民の支持を失おうとしているのである。イラク人質の扱い、CIA諜報員についてのリークなど、政府部内からの不正な問題の発覚がこれに輪をかけている。

 ブッシュ大統領の支持率が34%と大統領就任以来の最低を記録した。9−11直後に90%という最高の支持率を記録した彼も、ハリケーン・カタリナによる被害が発生した際の対応の失敗や、イラク戦争の泥沼化など、様々な失敗が積み重なったことで人気低迷に直面することとなった。テロリストとの戦いを宣言して国民の高い支持を得た強いリーダーが、テロリストとの戦いに勝利の終止符を打てず、国民の支持を失おうとしているのである。イラク人質の扱い、CIA諜報員についてのリークなど、政府部内からの不正な問題の発覚がこれに輪をかけている。

 ブッシュ大統領は、就任当初から、米国財政が単年度で黒字になったこと等を背景に大幅な減税政策を行うなど、強いリーダーシップの下に米国を率いようとする姿勢を見せてきた。彼は、妥協せずに自分の信念を貫くことをモットーに、二千年の大統領選挙での勝利以来、次々と法案を通して来た。頭が悪い等の批判を受けながらも、「強いリーダーシップは政治を成功させる」とのシンプルな政治学的信念に従って、米国経済の反映を維持してきた。しかし、夏場以降の様々な問題発生とともに、弱気な雰囲気を見せ始めたことを切掛けとして、妥協を模索するホワイトハウスの姿勢が逆に共和党の団結を静かに崩す流れを作っているようである。一枚岩のように見えた共和党議員達も、こうした雰囲気の変化を俊敏に感じ取って、微妙ながらも姿勢を変え始めたのである。この結果、第一期目のスピーチの最中や、昨年の大統領選において、「私はやらなければならないことを知っている」という効果的な漠たる表現で強いリーダーシップを見せることに成功していた彼は、今では全くこの言葉を使えない状況に陥ってしまったのだ。

 同大統領は、彼自身が尊敬するレーガン大統領の減税政策を上回る大幅な減税を経済政策の柱として、ドットコム・バブルの崩壊とテロ事件等によって悪化した米国経済を再び回復させることに成功してきた。彼の約五年間の大統領期間で最も成功したのは経済政策である。しかし、ここへ来て、人気が落ちてきたことで弱さを感じさせるような雰囲気を醸し出し始めたブッシュ大統領は、減税に絡んだ経済政策の法案を通過させることも難しい状況に陥りつつある。かつて、レーガン大統領は、「民主党議員までもその気にさせて共同責任による全国民のための法案を作る」という発想の下、減税政策法案を通過させることに成功したが、人気を背景としたリーダーシップを失ったブッシュ大統領も、レーガン大統領とは違う意味でこの政治運営を真似る必要があるかも知れない。

野党の攻勢激化に加え与党からも離反か

 こうした状況下、一部には、共和党は中間選挙で敗北し、大統領選挙でも勝てないと言い始めるマスコミ関係者が増えてきている。そして、その理由は、リーダーシップを失ったブッシュ大統領が、1.2011年に期限切れとなる減税の期限延長を行えないこと、および2.財政赤字が既往最高を更新し続けているため更なる減税は不可能なこと、の二つである。つまり、彼の経済政策の目玉である減税政策が頓挫すると、共和党政権は基本的に国民にアピールするものを失い、ブッシュ人気の凋落とともに政権の座から去るというわけだ。

 実際、ブッシュ政権にとって、減税政策を進めることは二千八年まで順調に政権を運営するためだけでなく、次の大統領を共和党から出すためにも必要な措置の一つである。一方、同大統領の人気は、レーガン大統領のようなハンサムな容貌とチャレンジングな政策の貫徹、というような真の意味でのリーダーシップに基づくものではなく、9−11以来のテロとの戦いをベースとするものである。従って、戦争での勝利という国民を統率するのには最も有効な環境が過ぎ去り、逆に戦争の泥沼化によって国民の世論が同大統領から離れた以上、簡単には人気を回復することは困難であり、何とか国民受けする法案の通過に漕ぎ着けたいというのが願いであろう。

 こうした状況下、民主党サイドは、中間選挙および大統領選挙に向けて、ブッシュ批判と共和党の切り崩しを始めた。一方、“寄らば大樹の陰”という具合にブッシュ人気にあやかっていた共和党議員の中に、裏切り者が出始めている、これが現在の共和党政権なのである。

 当然のことながら、まだ三年先の次期大統領選挙のことを議論するのは、流石に気が早い。特に、現時点では誰一人として公式に大統領選出馬を表明している者がいない以上、現在のブッシュ大統領を第三者的に観察することだけで、ストーリーを作り上げ始めたワシントニアンの言動は、ちょっと行き過ぎかも知れない。しかし、そのような興味本位の噂に効果的な対応を政策面で見せられないのが、現在のブッシュ政権の悩みだ。結局、これを打開するのは、経済政策面ということではなく、国民の多くが求めている「イラク駐留米軍の早期撤退」だけなのかもしれない。

「経済界」2006年1月10日号 掲載分

( 2006年05月18日 / 酒井吉廣 )

※記事の無断転用・掲載は、厳禁する
酒井吉廣 / YOSHIHIRO SAKAI
一橋総合研究所 正会員
日本銀行にて、営業局(現金融市場局)、考査局副調査役、信用機構室調査役(マクロ・マネタリーポリシー、ミクロ・プルーデンスポリシー、およびペイメント・システムの中央銀行の三機能に従事)など十五年勤務。その後、アメリカ公共政策研究所(American Enterprise Institute)に主任研究員として三年勤務。現在は、戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Study)客員研究員、および関西学院大学非常勤講師。米国犯罪学会員、米国企業再生委員会会員、国際公共経済学会会員、米国リスクマネジメント協会会員。APECや日米財界人会議など欧米での講演、TV・ラジオ出演、FTやInternational Economyなどの英字新聞・雑誌への寄稿多数。「ハンドブック・CMBS(商業用不動産ローン担保証券)」(エール大学ファボッチ教授著)の翻訳を金融財政事情研究会より、「逆プラザ合意」をオーエス出版より出版。
 バックナンバー
■第1回 ネオコンの経済政策
■第2回 年内には3億人を超える人口大国の強み
■第3回 中南米支配の“象徴”ブレイディ・ボンドの消滅
■第4回 人気低迷下、経済運営に喘ぐブッシュ政権
■第5回 サブプライムの次は医療・保険問題
■第6回サブプライム問題が世界経済に影響を与える理由
■第7回 マクロ経済が意外と落ちない理由
■第8回 昨年(2007年)は金融技術に足をすくわれた
■第9回 大統領選挙の年は景気刺激効果が強いが・・・
■第10回 米国経済の今後を占う“対米投資”
■第11回 カストロの引退でキューバはどう変わるか
■第12回 金融・証券市場混乱でドル安は続く模様
■第13回 大学のビジネス化で大成功し教育水準も向上
■第14回 ペイリンは初の副大統領となるのか?
■第15回 オバマに軍配(第一回目のディベート)
■第16回 副大統領候補のディベート:ペイリンは実は負けた?
■第17回 オバマがリードを拡大(第二回目のディベート)
■第18回 大統領選挙まであと二週間:三回目のディベートとその後
■第19回 「911メモリアル式典」から「ウォールストリート占拠」へ 〜普通に戻りたい米国民感情
■第20回 2012年:アイオワ州党員集会投票結果と共和党の各大統領候補について
TOP PAGEこのページのいちばん上へ
ご利用に際して個人情報保護方針 Copyright (c) 2002-2019 Hitotsubashi Research Institute. All Rights Reserved.