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酒井吉廣の″米国・これが真実!″

第二回 年内には3億人を超える人口大国の強み

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写真は、文意と関連なく、季節の風景を入れています。ロード毎に変わりますのでこちらもお楽しみ下さい。

景気拡大を支える“安定的”な人口増加

 高齢化、少子化、人口減少と将来に向けて三つの問題を抱え、昨年ついに人口が一万人減少した日本とは対照的に、米国では、百年以上にわたり、安定的に人口が増加している。

 読者の皆さんは、「ポピュレーション・クロック(人口時計)」なるものをご存知だろうか。これは、米国に限らず、世界の国で人口が時間とともにどうなっているかを知らせるものである。これによると、米国の人口は4月20日の段階で298,554,952人となったが、米国では13秒に一人ずつ人口が増えているので、これを計算すると、年内には3億人を超える見込みである。人口の多い国と言えば、中国(13億人)、インド(11億人)が有名で、この両国については、将来的に最も有望な市場として欧米系や日系等の企業や金融機関が相次いで進出している。一方、意外と気にされていないが、世界で三番目に人口が多いのは米国である。

 逆を言えば、米国が長年にわたり世界の中で注目される市場であり続けてきたこと、またこれからも世界の中で最も注目される市場であろうことの背景には、世界第三位の人口と旺盛な消費意欲の二つがあるのだ。

 因みに、世界の人口は4月20日段階で65億1千万人であり、世界の人口増加と比べると、米国の人口はこの百年間ほぼ一定割合で安定的に推移しており、ある意味では理想的な展開となっている。

 米国の人口が一億人を超えたのは1915年、二億人を超えたのが1967年であるから、この間が52年かかっており、次の一億人の増加の39年間と比べると、人口増加の割合が厳密には少しずつではあるが加速していることがわかる。この間、米国では、28秒毎に一人ずつ移民が増加しており、この移民政策が米国の安定的な人口増加に寄与していることも窺われる。

 一方、米国と日本の違いをやや詳しく比較しておくと、2005年、日本が一千人当たりの誕生数および死亡数ともに9人であったのに対して、米国の場合、誕生数が14人、死亡数が8人と誕生数の方が大きく死亡数を上回っている。

 しかも、注目すべきは、この誕生と死亡の数は、今から二十年後も14人および9人とほぼ昨年と同じである点だ。同じ2025年には、この数がそれぞれ8人と13人となっており、人口減少が明確になっている日本とは大きな違いである。因みに、以前、弊紙でも取り上げた出生率であるが、日本の1.4人に対して米国は2.1人であり、人口が減る日本と増える米国が対照的となっていることは、どの指標をみても明確にわかる。そして、米国の年間の人口増加数は、毎年の需要1%の増加に繋がっており、人口の増加が景気の拡大をも支えていることもわかる。

 この間、米国の高齢者(65歳以上)の全人口に占める割合は、過去50年間に緩やかな上昇を続けてきており、現在12.3%であるが、2030年代央までの増加を続けて20%程度に至った後は、概ね横這いで推移することが予想されている。これも、すでに高齢者の割合が20%近傍にあり、今後の50年間で二倍に増えようとしている日本と比べると対照的だ。

高齢化でも旺盛な消費で貯蓄率は低下

 こうした中で、日米の貯蓄(ここでは個人の所得から消費を引いた数字)の状況をみると、日米ともに貯蓄率が80年代半ばから低下傾向を辿ってきており、2004年の貯蓄率は日本が2.8%、米国が1.8%と、何れもこの20年で五分の一にまで低下している。通常、貯蓄率は、失業や定年退職によって勤労所得がなくなった世帯で減少になるため、日本のように、現役を引退した高齢者世帯の割合が高まっている国において、社会全体の家計貯蓄率が低下するのは、ある意味で当然だ。日本の場合、高齢化のほかに、高齢者の消費性向の上昇、および長期的な景気後退で貯蓄の取り崩しが増えたことも影響している。

 ところが、家計の貯蓄率は、人口が増えている米国でも低下している。これは、長期的な景気拡大トレンドに加えて、不動産を中心とした資産価格の上昇にも支えられた旺盛な消費行動の結果によるものと考えられる。勿論、これには、将来のために貯蓄する日本人と、現在を楽しむために消費を行う米国人の気質の違いにも影響していると思われる。しかしながら、失われた十年とその後の景気回復局面において、日本人はかなりアメリカナイズされており、高齢者の消費も活発化しているため、日本の貯蓄率はこれから一段と低下傾向を強める可能性があり、低下傾向が止まろうとしている米国とは、これまた大きな違いなのだ。

 米国では、子供のない夫婦が養子縁組をすることは、結構頻繁にある。しかも、白人の子供がアジア系であったり、黒人の子供である例も少なくない。そして、実はこの養子縁組されている子供が、少なからず移民や移民の子供であるのも意識する必要がある。このような事情まで考えてみると、人工的な数字の動きを感じさせる米国の人口増加は、米国の“陰謀”と誤解されるほど巧みな移民政策に支えられていると考えられるのだ。米国の3億人の人口は、イラク戦争以上の大規模な戦争も想定した計画的な増加政策の結果なのかも知れない。

( 2006年04月17日 / 酒井吉廣 )

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酒井吉廣 / YOSHIHIRO SAKAI
一橋総合研究所 正会員
日本銀行にて、営業局(現金融市場局)、考査局副調査役、信用機構室調査役(マクロ・マネタリーポリシー、ミクロ・プルーデンスポリシー、およびペイメント・システムの中央銀行の三機能に従事)など十五年勤務。その後、アメリカ公共政策研究所(American Enterprise Institute)に主任研究員として三年勤務。現在は、戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Study)客員研究員、および関西学院大学非常勤講師。米国犯罪学会員、米国企業再生委員会会員、国際公共経済学会会員、米国リスクマネジメント協会会員。APECや日米財界人会議など欧米での講演、TV・ラジオ出演、FTやInternational Economyなどの英字新聞・雑誌への寄稿多数。「ハンドブック・CMBS(商業用不動産ローン担保証券)」(エール大学ファボッチ教授著)の翻訳を金融財政事情研究会より、「逆プラザ合意」をオーエス出版より出版。
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