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前田高昭の【海外メディアで読む論点・原点】

第17回 米連邦準備理事会(FRB)の金融政策−金融正常化の動きの現状と展望

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昨年9月の本欄第13回で、米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和策からの出口戦略のひとつである政策金利引き上げのタイミングに関する論議を紹介した。FRBは昨年12月16日、世界の市場関係者が注目するなか開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%引き上げることを決定した。これにより現在の0−0.25%の誘導目標は0.25%−0.5%に引き上げられた。利上げは小幅だが、FRBが遂に金融正常化に乗り出したことで画期的意義があり、主要メディアも賛否両論の多様な主張を展開している。以下に、今回の利上げと今後の利上げ日程や程度をめぐるメディアの論調を紹介する。

先ず、利上げ決定に反対もしくは懐疑的な論議を観察する

12月16日の利上げ決定が確実視されるなか、15日付フィナンシャル・タイムズは「フライイングになるかもしれないFRBの利上げ(The Federal Reserve may be jumping the gun)」と題する社説で、現時点での利上げは説得力に欠けると次のように論じる。

■連続的な利上げは回避し、必要なら利下げへ回帰

表面的には、米経済はこの5年間、失業率も下がるなど、着実かつ時に力強く成長し、正常な環境であれば、また歴史的な基準からみれば、需給ギャップも解消して賃上げや消費者物価の上昇が始まろうとしているように見える。しかし、FRBは何年もインフレ圧力を過大評価してきてきた。失業者も不完全雇用者の数は少ないが、機会があれば働く意欲のある者は多いとみられ、経済は暫く過度のインフレを引き起こすことなく長期的成長率を上回る成長を続けられると思われる。ただし、FRBがここまで利上げのシグナルを発信してきた以上、利上げをしないと利上げをした以上の混乱が起きるだろう。したがって、利上げはしても、連続的に利上げをしてきた過去とは決別し、経済が低迷する兆しをみせたら方針を変更する用意があることを明確にすべきだ。

■経済全体に与える恩恵が不透明

次いで12月18日付ニューヨーク・タイムズは社説「FRBの次の動き(The Fed’s Next Move)」で、この利上げの勝者が利幅を拡大できる銀行なのは明らかだが、経済全体に与える恩恵が不透明だと指摘し、次のように利上げ反対論を展開する。利上げの経済全体に与える恩恵がどのようなものかを見通すのは難しい。失業率は最近、5%で着実に推移しているが、失業者とフルタイムの就労を望むパートタイム従業者や職探しを断念した無業者などを含む不完全雇用率は依然として10%近くと高い。こうしたスラック(余剰労働資源)が存在する状況の結果の一つとして、大半の労働者にとって賃上げは今もなおごく稀である。賃金や消費者物価の上昇の兆しもみられない現在、FRBが経済を低迷させるリスクのある利上げをする必要は全くない。

■希望はFRBが今後の利上げに慎重なこと

こう論じた社説は、次いで銀行はインフレによる融資の目減りを恐れて利上げを望むものだが、FRBはこうした心配性の銀行を甘やかし、雇用や賃金を犠牲にしてもインフレとの戦いを優先させる傾向があると指摘、今回の利上げは小幅であるにしろ、FRBが再び完全雇用よりインフレとの戦いを優先させたことを示したと批判する。そのうえで社説は、FRBが再度の利上げはインフレ上昇の証拠が実際にみられた場合に考えると声明書で述べていることを挙げ、希望はFRBが今後の利上げに慎重なことだと指摘する。

■試練に直面する米経済

こうした利上げ反対論に対し、16日付ブルームバーグ社説「FRBの新常態(The Fed's New Normal)」は、利上げを容認する一方で、FRBの前途は多難だと警告する。社説は、金融政策を徐々に正常に戻せる程度に労働市場のスラックも縮小したが、利上げ後の進路は平坦ではないとし、米経済は今後数か月間、3つの試練に直面すると次のように論じる。

■米政府や議会にも重い責任

第1に、FRBは正常とは程遠い条件の下で正常化を進めなければならないとする。すなわち、利上げをするには、資金不足を演出する必要があるが、FRBは量的緩和によってバランスシートを膨らませ、市場に数兆ドルの資金を流し込んでいると指摘する。第2に、投資家向けに次に何を期待すべきかを示さなければならないとし、第3は、失業率が低下しても賃金やインフレ上昇の兆しがみられない現状では、景気後退が再発する可能性を排除できないと指摘する。ただし、FRBはマクロ経済政策の全責任を負っておらず、金融政策と並んで重要な財政政策を担う米政府や議会の対応の鈍さを批判、このままでは米国は重い対価を支払わされると警告する。

■不透明な金融政策正常化の結果

17日付ウォール・ストリート・ジャーナル社説「Up From Zero(日本版記事:【社説】利上げに踏み切ったFRB、政策の終息には程遠い)」も冒頭で、FOMC後の政策声明で今後の利上げが段階的かつ小幅になると示唆されたため、多くの投資家が今回の「利上げの開始」を歓迎したようだが、金融政策正常化が段階的なものであるにせよ、どのような結果を生むかについては誰にも分からない、というのが金融市場関係者の大半の見方だと伝える。

■終わりに程遠い金融政策の大実験

そうした不透明感の理由として、第1に多数の投資家がFRBの政策をめぐり大きなリスクを取っており、投資家の過剰レバレッジやヘッジ不足の規模が判然としないこと、第2に、FRBが今後、利上げを進めていくうえで、まだ試されたことのない新しい手段を使うことを挙げる。すなわち、FRBは金利に影響を及ぼすために売買する短期米国債をもはや十分保有していないため、銀行がFRBに預け入れる準備預金のうち所要額を超える超過準備に付与する金利を動かすだろうと予測、FRBが民間銀行の超過準備に支払う利息は米財務省に毎年支払う配当から差し引かれるので、財政赤字が膨らむことになり、議会がどう反応するかが問題になると警告する。そのうえで、こうした状況はFRBによる金融政策の大実験がまだ終わりには程遠いことを裏付けているとし、しかもFRBが約束していた速いペースでの経済成長も実現していない現状、金融正常化がうまく達成されるかどうかは疑問だと指摘する。

次に、賛成論を観察する。

■ゼロ金利政策で新たな成長を導いたFRB

12月18日付ワシントン・ポストは社説「利上げで的確な審判を下したFRB(The Federal Reserve makes a good judgment call in raising interest rates)」で過去7年間のゼロ金利時代を振り返り、FRBはこの間、大規模な金融大恐慌を阻止し、新たな成長を導いたと称賛し、今回の緩慢な利上げの決定に支持を表明する。ただし、利上げのリスクとして、新車や住宅販売の阻害要因になりかねないこと、ドル高による米輸出の伸び悩み、新興国経済を圧迫するリスクを挙げ、さらに米国内で量的緩和マネーが生産性を最大限向上させる投資に回らず、経済は名目で成長したが、賃金や労働参加率は相変わらず失望を呼ぶ結果に終わっており、低インフレも続くなか、FRBは利上げを待つべきだとする専門家も多いと指摘する。

■>完全に擁護されるイエレン議長の決定

それにも拘らず、社説はイエレンFRB議長の利上げ決断への支持を次のように表明する。FRBのイエレン議長は、長く待ち過ぎてインフレが起こり、金利を急激に引き上げざるを得なくなるよりも、今緩やかな利上げに動く方がよいのだと主張する。こうした個人的見解や説明責任がFRB議長としての器量を示している。他方、そのような責任に縛られない政治家たちは早速、イエレン議長への攻撃を開始した。しかし、イエレン議長の決断は完全に擁護されるべきもので、実際、久しい以前から予告されていたのだ。

■金融正常化はFRBの政治環境も正常化する

社説は最後に、FRBが悪い状態にある経済のかじ取りを任せられる必要性が高くなればなるほど、政治の標的になり易くなると述べ、それがFRBの最も貴重な財産である政治的独立性を損なってきたとし、金融正常化に伴う一つの利点としてFRBを取り巻く政治的環境の正常化を挙げる。同時に、今後は議会が財政政策を通じて責任を果たすべきだと主張する。

今後の利上げ日程と金利見通し

■食い違うFRBと市場の見方

それではFRBは今後、どのような日程で、どこまで利上げを実施するのか。この問題について12月18日付ブルームバーグ・ビジネスウイークは「金利見通しで食い違うFRBとウォール街(The Fed and Wall Street Differ on How High Rates Will Go)」と題する記事で、FRBは2016年中に4回以上の利上げをすると示唆するが、トレーダーらは2回程度を見込んでいると次のように報じる。

■損なわれたFRBへの信頼

FRBの金利見通しに対する信ぴょう性の欠如は、来年以降のFRBの政策運営を複雑にするだろう。FRBは過去5年間に渡って再三利上げを示唆しながら、経済条件が好転していないとして見送ってきた。このため信頼性が損なわれたのだ。12月16日に発表されたFOMCメンバーによる来年末の予想金利水準の中央値は、1.25%〜1.5%だった。これはFRBによる4回の0.25%引き上げを見込む内容である。これに対し、市場は来年末までにFF金利は1%弱になると予想しているとトレーダー筋は語る。こうした格差が生じる原因は、ひとつには予想のやり方の相違がある。FOMCメンバーは最も可能性が高いと考える年末の金利水準を1つ選択するが、市場関係者は景気後退入りなど経済全体のあり得る結果を考慮して予想する。また、FRBは経済成長やインフレ率の上昇がみられない限り利上げをしないと考えられるので、市場としては結局、FRBは自らが述べるほど迅速に利上げをしないと予想することになる。

■来年の経済見通しに弱気な市場の見方

ただし、FRBの利上げペースを甘くみているかもしれないと考える市場関係者もいる。RBCキャピタル・マーケットのエコノミストは、市場の予想金利に賛成するには、来年の経済成長見通しについてかなり弱気になる必要がある、とコメントする。またゴールドマンサックスのエコノミストは、FRBの予想には希望的観測が含まれ、明るい面が出過ぎているかもしれないと評し、FRB関係者はオブザーバーではなく政策担当者であり、市場の金利予想を一定の方向に導こうとしているのだと同エコノミストは語る。例えば、FRB関係者の2018年の金利見通しは3.25%から3.5%の間に集中しており、2016年末の金利見通しは2018年に向けての出発点として位置づけられていると指摘する。

■タカ派の力が増すFOMCのメンバー交代

なお、この問題との関連で12月28日付ウォール・ストリート・ジャーナル記事「Fed Poised to Look a Bit More Divided(日本版記事:FRB内の意見対立、2016年はさらに深まる恐れ)」が注目される。記事は、金融政策を決定する米連邦公開市場委員会(FOMC)の非常任の議決権メンバーが2016年に一部入れ替えになる予定(注1)であり、このために当局者間の意見の違いがこれまで以上に鮮明になる可能性があると報じる。記事によれば、降板する4人の総裁のうち、3人が利上げ慎重派(緩和政策を支持するハト派)だったが、新任の4人は3人が利上げ推進派(金融引き締めを主張するタカ派)だというのである。つまり、3人がハト派からタカ派に入れ替わることになる(注2)。ただし記事は、常任メンバーがイエレン議長の意見に反対することは少なく、引き続きイエレン議長が主導権を握ると報じ、さらに、イエレン議長はコンセンサス形成能力に長けており、非常任のメンバーが交代しても政策の大筋はまったく変わらないとのエコノミストの見方も紹介する。

■政策の指針は日付ではなく統計資料

他方、12月28日付ブルームバーグは「FRBの次の対応(The Fed's Next Moves)」と題する社説で、FRBの動きをめぐり市場などで様々な憶測や観測が取りざたされているが、FRBは経済の今後の状況に焦点を当て、利上げに関するスケジュールについての憶測を追い払うべきで、今は先入観を持たないことが従来に増して重要だと主張する。理由として、不透明な経済状況を挙げ、成長は堅実だが遅く、伝統的な基準からすると完全雇用の状態にあるが、賃金や物価のインフレは起きておらず、正規労働を望むパートタイム従業者の数も多く労働市場には未だスラックが存在していると指摘する。そのうえで、今回の利上げは失業率が低下しているため正当化されるが、そのことよりも利上げを決定したのはカレンダーだと述べ、FRBが長らく年内の利上げを示唆してきたために投資家は12月の利上げについて確信を持っていたと指摘、今後は日付(dates)ではなく、統計資料(data)が政策の指針になるよう徹底すべきだと強調する。

■金利正常化を急ぐべし

最後に、利上げを急ぐべきだと主張する1月13日付ウォール・ストリート・ジャーナルの論説記事「A Federal Reserve Oblivious to Its Effect on Financial Markets(日本版記事:【寄稿】FRB、金利正常化を加速すべき)」を紹介する。筆者はレーガン政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務め、現在はハーバード大学教授のマーティン・フェルドシュタイン氏である。記事は冒頭で、米株価が今年初に急落した原因は中国市場の混乱にあったとしても、FRBによる長年の非伝統的な金融政策に原因があるとし、量的緩和政策によって人為的に吊り上げられた割高な株価の調整が始まったのだと指摘、こうした状況で、極端な低金利が長引けば、システミックなリスクが高まり、経済を不安定化する恐れも強まると警告する。

■システミック・リスクと流動性低下リスクへの対処が必要

次いで記事は、この金融のシステミック・リスクに対応するために金融機関全体に行うマクロ・プルーデンス政策が米国には自己資本比率規制が存在する程度で、しかも、FRBの監督下にある商業銀行の資本市場全体に占める割合は3分の1程度にすぎず、またFRBには影の銀行や保険業界が抱えるリスクを減らす機能がないと指摘、さらに、ドッド・フランク法(米金融規制改革法)により、銀行は保有資産が制限され、自己資本比率も引き上げられた結果、金融市場の流動性が低下し、投資家や投資信託が債券を売ろうとする場合、受けて立つ買い手が少ないため、債券価格の急落を食い止められないリスクがあると述べ、債券価格が下落し長期金利が上昇すれば、株価も下落する恐れがあると主張する。

■負のショックは税制や財政出動で対応

また、FRBは輸出や建設の急激な落ち込みなどの負のショックに備えるために金融緩和を続けると主張しているが、こうした戦略には金融の安定を不要なリスクにさらす恐れがあり、税制や財政出動という、もっと安全な方法を通じて総需要を維持できると指摘する。記事は最後に、FRBは「雇用の最大化」という目標を事実上達成しており、インフレ率が近い将来に2%の目標に達することを認めて短期金利の正常化を加速させた方が米経済のためになると提言する。

結び

以上みてきたように、今回の利上げについてメディアの論調は、反対論と賛成論、それに懐疑、批判派と多様である。反対論者や批判派は米経済の回復は表面的だとし、今後の情勢は不透明であり、景気後退の再発の可能性を排除できないとして、FRBが以後の利上げに慎重なことが今後の希望だと指摘したり、連続的な利上げを回避し、必要なら利下げへ回帰すべきだと主張したりする。賛成派は、FRBはゼロ金利政策で米経済を新たな成長に導き、また、金融正常化によって政治的独立性が欠かせないFRBを取り巻く政治的環境も正常化したなどと評価する。そうした多様な見方の中で、注目すべき論点がいくつかある。

■金融政策だけでは米経済は救えない

第1に、反対派も賛成派も利上げ後の状況に不透明感が漂い針路は平坦ではないと懸念を表明、かつ複数のメディアが金融政策だけでは米経済は救えないと財政政策を握る議会と政府の責任が重いと主張していることである。

■金融正常化も未知の領域

さらに、第13回の本コラムで指摘したように、FRBは量的緩和策によって買い上げた米国債などの資産をバランスシートに大量に積み上げており、これをいかに縮小していくかという問題が残されている。さらに、ここでは詳細について触れなかったが、米利上げが新興国市場からの資金流出を促し、これによる新興国市場での金融危機発生や世界的な通貨戦争勃発も懸念されている。FRBはこうした環境の中で金融正常化を進めていかなければならない。その意味で、FRBの金融大実験は終わっていないというメディアの指摘は正しい。FRBは量的超緩和に乗り出した時と同じく正常化に際しても、未知の領域に踏み出した。金融政策正常化はようやく緒に就いたばかりの段階にある。

■経済の実態を基に政策判断を下すべし

また、2016年には4人のFOMCメンバーが入れ替わり、このうち3人のハト派が3人のタカ派に交代する形となるため、タカ派色が強まるとみられている。ただし、主導権を握るのはイエレン議長であることは変わらず、議長の調整力が試されることになろう。その議長に対し、ブルームバーグ社説は世間の関心を利上げの日程に惹きつけず、統計数字に示される経済の実態を基に政策判断を下すという方針で一貫するように注文を付けている点が注目される。

■金融のシステミック・リスクやインフレ急騰への警告

なお、フェルドシュタイン論文が、低金利や量的緩和は株式債券などの資産価格の高騰を招き、これが金融のシステミック・リスクを増大させたが、的確な政策面の対応がなされてこなかったとし、さらに、好調な雇用情勢と低金利の組み合わせによる急激なインフレ襲来の可能性に対し強い懸念を示している点も注目すべきであろう。ただし、原油安と輸入物価を押し下げるドル高が、インフレ下押し圧力になっている状況には触れていないことに留意しておきたい。

■経済の先行きで見方が分れるFRBと市場―対話の深化が不可欠

他方、今後の金利見通しについてはFRB当局と市場の見方に乖離がみられる。これは一部のメディアが指摘するように、FRBが米経済の先行きを市場よりも明るく見過ぎているためかもしれない。ただし、市場の金利予想に影響を与えるのが中央銀行の政策としてきわめて重要であり、FRBとして引き続き市場との対話を深めていくのが不可欠と言えよう。

(注1)FOMCは7人のFRB理事(現在は2人欠員)と12人の地区連銀総裁のうちの5人の計12人で構成される。地区連銀総裁のうち、ニューヨーク連銀総裁は常に議決権を持ち、残りは11地区連銀総裁から4人が毎年輪番で選ばれる。ただ、会合には全ての地区連銀総裁が出席し、議論に参加する。

(注2)記事によれば、来年、FOMCの議決権を持つのは、セントルイス地区連銀のブラード総裁、カンザスシティー地区連銀のジョージ総裁、クリーブランド地区連銀のメスター総裁、ボストン地区連銀のローゼングレン総裁の4人である。このうちブラード総裁は、15年初めの利上げを望み、経済が想定以上に力強く推移していることを理由に(利上げを)加速するという選択肢も維持すべきだと主張している。ジョージ総裁は一貫してFRBの緩和策に反対姿勢を示し、メスター総裁も12月のかなり前から利上げを支持していた。ローゼングレン総裁だけが今年初めに利上げを支持していなかったメンバーである。つまり、4人の新任総裁のうち、3人が利上げ推進派(金融引き締めを主張するタカ派)である。
他方、議決権を失うのは、シカゴ地区連銀のエバンズ総裁、リッチモンド地区連銀のラッカー総裁、アトランタ地区連銀のロックハート総裁、サンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁である。このうち、ラッカー総裁だけが今年9月と10月の会合で利上げ開始を主張し、金利据え置きに反対票を投じた。つまり、降板する4人のうち、3人が利上げ慎重派(緩和政策を支持するハト派)だった。

( 2016年01月23日 / 前田高昭 )

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前田 高昭 / TAKAAKI MAEDA
日本翻訳協会会員、日本英語交流連盟会員、バベル翻訳大学院(USA)プロフェッサー
東京大学法学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)、東銀リース(株)に勤務。銀行では内外拠点で広く国際金融業務に従事。アジア、中南米、北米(ニューヨークに6年半)などに在勤。東銀リースでは中国、香港、インドネシア、フィリピンなどでの合弁企業の日本側代表、また国内関連会社の代表取締役社長を務める。リースは設備・機械・プラントなどの長期金融を業とし、情報機器、船舶、航空機などが代表例。現在はバベル翻訳大学院(USA)で国際金融翻訳講座を開講するほか、バベル社翻訳誌「リーガルコム」の「World Legal News」欄に毎号寄稿。同誌を承継したWEB版「The Professional Translator」に現在、定期寄稿中。訳書に「チャイナCEO」(共訳)ほか。米英ジャーナリズムのアジア、日本関連記事を翻訳、論評する「東アジア・ニュースレター」をメルマガに連載中。
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