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前田高昭の【海外メディアで読む論点・原点】

第4回 東日本大震災と日本の政治

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写真は、文意と関連なく、季節の風景を入れています。ロード毎に変わりますのでこちらもお楽しみ下さい。

高まる政治改革への期待

4月に発表した前号で、東日本大震災と日本経済の近況に関する主要紙論調を紹介した。その後、大震災や原発事故から3か月を経て菅首相は震災後の対応の遅れなどの責任を取り辞任を表明した。だが、肝心の辞任時期があいまいなまま政局は混迷を深め、2大政党制成立の期待を担って登場した民主党政権は漂流状態に陥っている。今回は、そうした日本の政治の現状と将来に対する主要紙の見方や提言を考察する。

震災直後に日本の政治針路について論じた注目すべき記事として、3月16日付ワシントン・ポスト記事「日本は危機により生まれ変わるか(Will the crisis create a new Japan?)」があった。記事は、日本政府にはいくつかの政策カードがあると述べ、具体例として、復興資金調達のための国債発行余力、住宅やインフラ再建のための移民労働者受け入れと労働市場の開放、東北地方再建に伴う東京一極集中の是正と経済活動の全国的展開、それによる経済の活性化などを挙げ現政権がこうしたカードを活用していけば、民主党が自民党に代わる政党として認知され、日本において2大政党制が成立し、日本は伝統を重んじる近代的な真の民主国家として再出発できると期待した。

英ガーディアンは3月12日付の論説記事「日本に必要な指導力、菅首相は発揮できるか。(Japan needs leadership, but can Naoto Kan deliver?)」で、日本は震災前に、弱体な政治、低迷する経済、社会のひずみ、地方に高まる不安定感などの不確実な要素を抱えていたと指摘、2月9日付ウォールストリート・ジャーナル記事を引用して日本も「中東革命前夜」に似た状況にあると評し、今回の大地震を契機として菅首相と民主党政権がそうした政治的革命に代替する何かを生み出すかどうかを国民は見守っていると述べ、大震災が日本にとって一つの大きな政治的転機になるかもしれないと論じた。

上述のウォールストリート・ジャーナル記事は、アメリカン・エンタープライズ研究所日本部長のマイケル・オースリンによる論説記事「日本に高まる危機感(japan's growing sense of crisis)」である。同氏は概略次のように述べる。日本では60年代の学生運動以来、不況、物価の高騰、物不足などを平静に乗り切り、90年代から続く経済の停滞や終身雇用制の崩壊、高齢化社会などに耐えてきた。だが、いまや日本人は日本が一つの転機に差し掛かったと感じている。特に、企業の責任者は政治の麻痺や人口減、内向きの若者などの危険性を実感している。こうした流れを変える必要性は誰しも感じているようだが、本能的に保守的な日本では今のところ街頭デモを繰り出すまでには盛り上がっていない。こう述べた後、同氏は、もう一世代の停滞が続けば、エジプトほどではないとしても、日本的民主主義の力が試される事態になろう、という予言と警告を発する。

混迷を深める政局への慨嘆と警告

その後の日本の政治状況に関する主要紙の報道や論説記事は、6月に起きた菅首相に対する不信任動議の提出と菅首相による辞任表明の時期に集中する。まず、手厳しい見方から見ていこう。6月2日付英エコノミスト誌は「日本の政治危機に勝者なし(Japan’s political crisis No one wins)」と題する論説記事で、大震災で日本社会は最善の対応を示したが、国会は2日、日本の政治が最悪の状態にあることをさらけ出したと述べ、菅首相は、危機の収束後に退陣すると発言して不信任決議を免れたが、国家的非常事態の最中に自らを数か月間もレイムダックにするお膳立てをしたと非難する。

次いで、不信任動議を提出した野党、自民党について参議院での力を利用して被災地の復興予算法案を妨害すると脅し、福島原発事故も政権担当時の原子力業界に対する監督責任があるにも拘らず、菅政権の対応を攻撃していると批判する。さらに、不信任案提出は、菅首相がエネルギー産業の規制緩和と原発依存低下を打ち出した時期と一致するとの見方を紹介、自民党に多大な政治献金を行ってきた東京電力などの電力業界は、今も業界への打撃を最小限に食い止めるため必死に議員詣でを繰り返しているとの関係筋情報を伝える。そして菅首相が、災いを転じて福となす知恵を持ち合わせていないか、まことに理解に苦しむとして、次のように述べる。

中でも不可解なのは、なぜ菅氏がこうした機会を有利に活用する才覚を持ち合わせていなかったか、だろう。大災害に見舞われて以来、市民は適切に決断力を持って対処してきた。菅首相が党内外の保守勢力の正体を明らかにしていたら、実際にかれらは姑息で現実から目をそむけ、かつ往生際の悪い負け犬集団であり、試練からもっと力強く立ち上がれたはずだが、そうはならなかった。悲しむべきは、日本も同様であることだ。

また、6月2日付フィナンシャル・タイムズは論説記事「菅首相は力尽き、『活力』に及ばず(Naoto Kan’t: less than “dynamic”)」で、時期をあいまいにした菅首相の退陣表明を就任時と同じく信念なき行動と表現、日本を「活力に満ちた(dynamic)」国に再生するという公約を実現した証拠もないままに退陣すると批判する。さらに2日付同紙は社説「決断しない菅直人(The indecision of Naoto Kan)」で、決断力ある指導者として登場した菅首相が、そうした理想像とは程遠い指導者であったことが明らかになったとし、国民の無私と禁欲的な対応はまことに感動的で、議員の間にも新たな一体感と目的意識が生まれ、20年に及ぶ経済病を打破する機会になると期待されたが、国民の精神は国会の硬い壁に阻まれたと慨嘆、議員らが争いをやめない限り、日本は政治の閉塞状態から脱却できないと警告する。

奮起を促す批判と提言

その一方で、不信任動議を批判し、菅首相や民主党政権に依然として期待を示す論調も見られる。6月3日付ウォールストリート・ジャーナルは社説「No Confidence in Tokyo(日本語電子版「それでも信の得られぬ菅政権」)」で、強力なリーダーシップが必要なこの試練のときに先の見えない不確実な状況が続くことになったとし、最近の世論調査では、大半の国民が首相の大震災への対応をお粗末と考えているものの、国難を顧みずに繰り広げられる民主党内の権力闘争を苦々しく思い、当面は菅首相の続投を容認しているとして、今は不信任案を通して退陣に追い込む時ではなかったと批判する。

次いで、米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが最近、日本国債の格付けを引き下げ方向へ見直したのは、日本の政治システムが機能不全に陥っているとの認識の表れとし、停滞打破には強力な指導者が必要で、それには政治資金スキャンダルを乗り切って今もただならぬ力を保持し、縁故や官僚支配の政治打破を唱える小沢一郎が適任であると主張、小沢氏が民主、自民両党の改革支持派を束ね、小さな政府と経済成長の促進に向けた国民的コンセンサスを形成することに期待を表明する。

さらに6月22日付フィナンシャル・タイムズ(FT)は、「悲劇を勝利に変えようと奮闘する日本(Japan bids to turn tragedy into a triumph)」と題する論説記事で、ジョン・ダワー(John W. Dower)著の「敗北を抱きしめて(Embracing Defeat)」を引用し、日本を戦前は封建国家から強力な工業国への発展と戦後は軍国主義から民主主義国家への転身を果たしたダイナミズムと高い適応力を持つ国家と評する。しかも、こうした変革は上からではなかったとして明治維新を例示、国民の心を突き動かした今回の大震災は、過去の歴史ほどの劇的変化を生まないとしても、新しいアイデアを生み出すかもしれないとし、東北地方の復興や関連する特別経済区創設の動き、大土地所有を可能とする新しい農業法制定、高齢者介護サービスを容易にする「コンパクト・シティ」などの構想を紹介する。

さらに大地震が市民のボランティア活動や非政府団体の復興救済活動を通じて日本社会を活性化させる可能性を指摘、こうした動きや構想に紆余曲折を予想しながらも、次のように結論する。歴史家がこの時期を振り返る時、大津波の前と後の日本には、少なくともいくつかの重要な違いがあると認めることになろう。ダワー教授は、そうした歴史の瞬間を「隙間をこじ開ける」と表現している。悲劇がもたらした機会を生かせるかどうかは、日本−国民と政府−にかかっている。

日本に真実の民主国家誕生の期待を表明したワシントン・ポストは、8月1日付社説「津波後の日本の政治課題(Japan's post-tsunami agenda)」で再度この問題を取り上げ、日本の政治家と国民に次のような提言と強い警告のメッセージを発する。菅首相の支持率が最低水準に落ち込み、政治が不安定化する中、復興は順調に進んでいるようだが、日本には復興だけでなく改革の推進が欠かせない。歳入増のほかに確固たる歳出管理策、さらに成長政策が不可欠で、法人税の引き下げ、女性に対する機会増大、中小企業の債務リストラ、環太平洋経済連携協定(TTP)を通じる貿易自由化などを推進しなければならない。それには政治の強いリーダーシップが必要だが、これが今の日本に最も欠けている。

むすび
アジアの中の日本――近隣諸国の動きを見る

以上見てきたように、主要紙は先ず震災前の日本の状況に眼を向ける。特に、冒頭で紹介したガーディアンとウォールストリート・ジャーナルの両記事は、日本が弱体な政治、低迷する経済、社会のひずみ、地方に高まる不安定感などを抱えて、大震災以前に中東革命前夜に似た状況にあったと指摘する。確かに中東を含む他のアジア諸国の政治動向と比較して、日本の政治的停滞は突出している。まず、アジア各国の状況を概観して見よう。

新興諸国の代表選手ともいうべき中国とインドは、ともに年率二けた台ないしはそれに近い経済成長率を達成し、経済はきわめて活力に富んでいる。共産党独裁体制の中国は別として、民主主義の古い伝統を持つインドは09年の総選挙で国民会議派が圧勝し、汚職の蔓延など様々な問題を抱えてはいるが、現在、改革派のマンモハン・シン首相が政権を担当している。

近年、経済が活発で一部の産業で日本に追いつき、追い越している韓国では、10年以上前から左右両陣営の政党が交代で政権を担当する体制が成立している。金大中(キム・デジュン)大統領率いる左寄りの民主党政権がアジア通貨危機を乗り切り、さらに北朝鮮との南北和解を果たし、金大統領がノーベル平和賞を獲得したことは記憶に新しい。次いで、政権は民主党の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領を経て保守派の李明博(イ・ミョンバク)大統領率いるハンナラ党に交代、同政権は活力に溢れている。

台湾でも10年以上前、独立を標榜する民主進歩党が長らく与党の座にあった国民党を破って政権交代を果たした。現在は馬英九総統率いる国民党が政権の座にあるが、馬政権は大陸との関係強化による経済活性化に成功、国民の支持を得ている。一方、民進党も地盤の南部を中心に次第に勢力を回復し、次期総統選での失地回復を狙っている。ここでも2大政党制が定着し、政治は安定し経済は活発である。

1980年代にピープル・パワー革命によりマルコス独裁体制を崩壊させたフィリピンでは、実は1940年代後半に2大政党制がすでに成立していた。ピープル・パワー革命はその後、韓国、台湾、タイさらにはインドネシアなどへと波及するが、フィリピンでもその精神が今日に至るまで引き継がれ、今年に入りピープル・パワー革命を主導したコラソン・アキノ元大統領の子息、ベニグノ・アキノが大統領に就任、反政府勢力との和解に向けて動き出すなど新しい施策を打ち出している。

タイは、都市部と農村部の経済発展の格差とそれによる深刻な所得、貧富格差という構造的問題を抱えるが、都市部エリート層を基盤とする民主党と、地方貧困層を地盤としたタクシン元首相の流れを汲む貢献党の2大政党が対峙する体制にある。アジア通貨危機に際してスハルト独裁政権が崩壊したインドネシアでも、小党乱立の混乱期を経て、今は政権2期目(任期5年)に入った中道穏健派のユドヨノ大統領の下で政情は安定している。

「隙間をこじ開けた」大震災

こうして見ると、アジア最古の民主主義の歴史を持つ日本の政治がもっとも不安定で、二つの有力政党が存在するとしても、それは名ばかりの混迷が続いている。しかも、一党独裁体制の下で経済発展を遂げる隣国、中国は、政治、経済ともに低迷する日本を尻目に世界における影響力と存在感を飛躍的に高めている。主要紙が、こうした日本に対して苛立ちを深めるのも当然であろう。

菅首相は危機収束後に退陣するというあいまいな発言をして不信任決議を免れたが、フィナンシャル・タイムズは、こうした菅首相の言動は日本を「活力に満ちた(dynamic)」国に再生するという公約を果たさないで退陣する信念なき行動だと批判、災害に耐える国民の精神は国会に届かなかったとし、議員らが争いをやめない限り、政治の閉塞状態は終わらないと警告した。エコノミスト誌は、なぜ菅首相が震災復興の機会を活用する才覚を持ち合わせていなかったか、と疑問を提起し、菅首相が党内外の保守勢力と対決していたら国民の支持を得て、試練から力強く立ち上がれたはずだと主張する。

こうした大震災が持つ歴史的意義を最も直截に表現したのが、6月22日付フィナンシャル・タイムズである。今回の大震災が新しいアイデアを生み出し、市民のボランティア活動、非政府団体の復興救済活動が日本社会を活性化させ、大津波の前と後の日本には、少なくともいくつかの重要な変化が起きるだろうと期待し、そうした歴史の瞬間をダワー教授の言葉を借りて「隙間をこじ開ける」と表現した。そして、悲劇の機会を生かせるかどうかは、日本国民と政府にかかっている、と提言する。

主要紙が挙げる今後の政策課題

さらに、こうした対外環境の変化に加え、今回の大震災は国民全体に深甚な衝撃と影響をもたらした。大震災、津波、原発事故、電力不足という災厄は国民生活に一大変化を引き起こし、国民の考え方や生活習慣も一変して政治に変革を迫っている。だが日本の指導者は、こうした現実をどこまで直視して対応しようとしているだろうか。例えば、復興資金の調達を巡り政治家と国民は財政赤字と膨れ上がる公的債務問題への取り組みに改めて迫られ、財政政策の在り方への見識を求められている。原発事故とそれによる電力不足の問題は、エネルギー政策の根本的見直しを、そしてエネルギー政策の見直しは、産業政策や環境政策の再考を迫っている。

そうした日本の政治を取り巻く内外の状況変化を主要紙は敏感にとらえ、幾つかの政策課題を提示している。例えば、3月にワシントン・ポストが挙げた5つの政策カードのうち、住宅やインフラ再建のための移民労働者受け入れと労働市場の開放、東北地方再建に伴う東京一極集中の是正と経済活動の全国的展開の可能性、さらに8月の同紙が提言した復興と構造改革の推進、歳入増と合わせ歳出管理策の確立、そして成長政策の推進、具体的には法人税の引き下げ、女性に対する機会増大、中小企業の債務リストラ、環太平洋経済連携協定(TTP)を通じる貿易自由化の推進などがある。高齢化と人口減という構造問題を抱える日本にとっては、いずれも重要課題であることは言うまでもない。20年前に失った経済活力を取り戻すには、復興だけでなく改革の推進が急務で、なすべきことは未だ山のようにあるのだ。

強力なリーダーシップに代わるもの

変革の機会を生かし、必要な政策を実行に移すには、強い指導力が必要と主要紙は一様に主張する。ウォールストリート・ジャーナルは機能不全に陥っている政治システムの停滞打破には強力な指導者が必要であるとし、政治資金スキャンダルを乗り切り、縁故や官僚支配の政治打破を唱える小沢一郎が適任と主張、同氏が民主、自民両党の改革派を結集して小さな政府と成長政策に向けた国民的コンセンサスを形成することに期待を表明する。同様にワシントン・ポストも、震災の復興と改革を同時に推進するには政治の強いリーダーシップが必要だとし、これが今の日本に最も欠けていると指摘する。

では、強い指導者とは、どういう人物か。そもそも日本の現代史で、そのような人物は存在したのであろうか。西側で、そうした指導者としてよく挙げられるのは、米国のルーズヴェルト大統領、英国のサッチャー首相だ。7月30日付英エコノミスト誌は、債務問題で危機に直面する欧州と米国の問題点として強い指導者の欠如を挙げ、危機は強い指導者を生むこともあるが、オバマ米大統領もメルケル独首相も指導力を発揮するよりは世論に耳を傾けるのに長けた指導者だと評する。そして、20年間も経済の低迷を続ける日本も同様であったと論じている。

 日本の政治的閉塞状態は、議院内閣制や二院制という日本の政治システムにあるという見方もある。ねじれ国会が円滑な政治運営を阻んでいることも確かである。だが、野党の参院支配は与党の失政に原因がある。ねじれの根源が与党にある以上、制度を変えても解決にはならない。むしろ、制度の趣旨を生かすことを考えるべきだろう。

日本はもともとコンセンサス重視の社会である。この特質は政治の社会で特に顕著と言えよう。明治維新の際には優れた人材が輩出したが、維新を成し遂げ、その後の日本を主導したのは一人の傑出した指導者ではなかった。優れた人材が総力を結集した結果ではなかったか。また、明治の先達が日本に大統領制ではなく、議院内閣制を持ち込んだのは、天皇制との調和という問題があったとしても、コンセンサス重視の日本的風土になじむ側面があったのではないか。アジアでは英領植民地の歴史を持つ諸国や王室を維持するタイなどを除き、大統領制を採用している国が多い。だが、日本では、一定の任期を保障し権力を集中する政治体制は、これほど首相の交代が激しい現状でも全く議論の対象にはならない。これは、そうした日本特有の精神風土に起因するのではないか。

今、日本が強い指導者を必要としているとしても、こうした人物が一日にして出現するわけではない。現実的な解決策は、コンセンサス重視の日本が得意とする総力の発揮以外にはないであろう。朝野の優れた人材を動員して、超党派の総智を結集する以外に方法はない。官民出身者を含む人材を広く登用する仕組みを超党派で組み立てることである。主要紙が指摘するように、政治家が狭隘な内紛を繰り返すようでは、日本は政治的閉塞状態から脱却できない。首相の交代時期が迫っているが、誰が後継者になるにしても、大災害が「隙間をこじ開けた」はずの歴史の一瞬を生かせるかどうかは、一人の指導者の力量ではなく、今は超党派の国民的努力にかかっているのではないか。歴史の一瞬を生かせなかった場合、その時には中東の春、もしくはそれに代替する何かが日本に訪れるかもしれない。だが、こじ開けられた隙間は、長く続くものではない、とダワ―教授自身が警告している。時間は限られているのだ。

民主党は政権交代を顕示するため3つの「脱」を目指した。外交面での「脱米国」、内政面での「脱官僚」と「脱大企業」である。その結果、日本外交は沖縄基地問題などで米国と、領土問題で中露韓と摩擦を引き起こし、内政は機能不全に陥り、構造改革は大きく後退した。ねじれ国会は、そうした民主党の政策に対する国民の審判であった。国民はねじれ国会を通して政党、特に民主、自民の両党に試練の時を課したのである。ねじれ国会への対応を通して国民は次の責任ある与党を選択する判断基準を得たと言えよう。そのことを民主、自民の両党は良く噛みしめる必要があるのではないだろうか。(2011年8月18日)

( 2011年09月10日 / 前田高昭 )

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前田 高昭 / TAKAAKI MAEDA
日本翻訳協会会員、日本英語交流連盟会員、バベル翻訳大学院(USA)プロフェッサー
東京大学法学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)、東銀リース(株)に勤務。銀行では内外拠点で広く国際金融業務に従事。アジア、中南米、北米(ニューヨークに6年半)などに在勤。東銀リースでは中国、香港、インドネシア、フィリピンなどでの合弁企業の日本側代表、また国内関連会社の代表取締役社長を務める。リースは設備・機械・プラントなどの長期金融を業とし、情報機器、船舶、航空機などが代表例。現在はバベル翻訳大学院(USA)で国際金融翻訳講座を開講するほか、バベル社翻訳誌「リーガルコム」の「World Legal News」欄に毎号寄稿。同誌を承継したWEB版「The Professional Translator」に現在、定期寄稿中。訳書に「チャイナCEO」(共訳)ほか。米英ジャーナリズムのアジア、日本関連記事を翻訳、論評する「東アジア・ニュースレター」をメルマガに連載中。
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